今日のカグヤクルー日記

クルーそれぞれの理念の実践や気付きを交代で掲載しています。

2016/10/06

「最善」

こんにちは。女将です。

カグヤが取り組んでいる古民家再生実践。
今回は福岡入り3日目に
100年間に10センチほど落ち込んでしまった大黒柱を、
もとの高さに持ち上げる大掛かりな作業が待っています。
人間でいえば一日がかりの大手術です。

とその前に、まずは家中の柱に天井、手すりなど
米ぬかオイルで磨いていきます。
細かなところも丁寧に、塗り込むように
力を入れて何度も何度も布で擦るうち
木目は黒光りしてくるのです。
でもよく見ると、家のあちこちに修繕の跡が・・・・・

柱が大きく落ち込んで家全体が歪んでしまったことで
家中の扉の開閉に不具合がでたのでしょう、
引き戸の底には角度をつけた薄い板が何枚もかまされ
部屋の入り口には、家の歪みに合わせ
いびつに扉枠が打ち付けられていました。
そればかりか、数ヵ所の柱には
古そうに見える塗装を施した板が全面に打ち付けてあり
本来の姿はすっかり隠されていたのです。

そしていよいよ、下がった柱を上げる日が来ました。
柱に接した3つの部屋の床をすべてはがし、
その道のプロ7名の技を結集させた真剣勝負です。
約7時間にも及ぶ大手術は無事成功です。
しかしその代償は大きく、
二階部分の壁は大きくひび割れ
歪みに合わせて修繕した箇所には新たな歪みが生じ
その痛々しい姿に、胸が締めつけられる思いです。
結局、騙しだましのその場しのぎの修繕は
さらなる問題を生み出してしまったのです。

本来あるべき道を外れ、それを無理に通し続ければ
いずれは行き詰まり、立ち行かなくなります。
そしていざ本道に戻そうとなったとき、
それまでのツケが一気に回ってくるのです。
何事も簡単に済ませてしまうことは
とても容易いです。
でも、そもそも本来の「意味」を考えれば
「最善」はきっと違ってくるのではないかと感じます。

この年老いた「聴福庵」が物事の本質を見ることを
忘れてはならないと教えてくれた7日間でした。

ミッションパート
佐藤真樹