上司との関係性

紹介した実験結果のうち、興味深い点について、山浦氏は、少し補足しています。

もし、部下との関係性が良好でも、(自他ともに認めるほどに)がんばっている部下をほめないでいるとどうなるのでしょうか?自分なりに工夫を重ねて仕事をしている部下に上司が何のフィードバックも与えないでいた条件では、部下は「暗黙の叱責を受けている」と感じていたのです。上司と疎遠な関係性にある部下の方が、暗黙裡に叱責されているという感覚が高まりやすい傾向にありましたが、上司と良好な関係性にある部下も程度の差こそあれ、同様のことを感じていたのです。

「上司とはうまくいっている(はず)、そして今、自分は自分なりに考えを重ねて仕事にあたっているけれど、上司は何一つほめることはない」このように、良好な関係にある上司から、今回の仕事については何の労いも、前向きな言葉もなかったという部下は、ひと言のフィードバックをもらった部下と比べて、統計的に有意に叱責されていると暗黙のうちに感じていたのです。

この実験は、上司と部下が出会って間もない関係性初期のころを模したものなので、そうであるならば、新入社員の期間には、とくに意識して対応したいところだと山浦氏は言うのです。心しておきたいことは、疎遠な間柄だから言わない、良好な間柄だから言わなくても伝わっている、ではないということだというのです。人を前向きにする言葉は大切だからこそ、惜しみなく確実に届けたいものだと言うのです。

最後に、「隠れた不満」に関して、重要ポイントを整理して挙げています。「ほとんどの組織では、不満が隠蔽される傾向にある」「ただし、不満は“やる気”の裏返しであり、チームが変化するチャンスでもある。不満をいかに有効活用できるかが、リーダーの力量である」「不満を有効活用するためにできることは、大きく2つあり、一つは『組織のメンバーがリスクをとって不満を表明しても大丈夫だ』と思えるような環境をつくること。もう一つは、ほめることで、メンバーのモチベーションを向上させること」「ほめ言葉は金銭報酬にも匹敵すると考えられる。ただし、的外れなほめ言葉や、関係を構築できていない相手にほめ言葉を使うと効果は出ず、むしろ逆効果を招く」などを挙げています。

次に山浦氏が組織に蔓延するネガティブな関係として挙げているのが、「権力」です。リーダーにとって「権力とどのように付き合うか」は、非常に重要な問題だと言います。リーダーが権力を誇示したり、威圧的な態度をとれば、その瞬間は、成果を挙げることができるかもしれませんが、信頼は崩れ、長期的に見ればチームのパフォーマンスが低下すると言います。

実は、心理学や脳科学のいくつかの研究は、権力を持った人が組織の利益にならないネガティブな行動をとってしまうことを明らかにしているそうです。「立場が人をつくる」とは、責任のある地位につくことで、人が成長するという意味の言葉ですが、良いことばかりではなく、権力という強い武器を急に持ってしまっただけで、それを振りかざしてしまうのが、人間の本質なのかもしれないと山浦氏は言うのです。そうであるならば、そうならないために対処法を知って、メンバーからの信頼を失わないような行動をとれるように準備をしなければならないと言うのです。

上司との関係性” への4件のコメント

  1. 「人を前向きにする言葉は大切だからこそ、惜しみなく確実に届けたいものだと言うのです」とありました。本当にこれは大切にしたいことです。何かをやってもらった時に「ありがとう」と言うこと、簡単なようで、とても難しいことですし、一言この言葉があるだけで気持ちが全然違います。やはり人はどこかで、誰かのためになりたいと言う欲求があるように思います。だからこそ、「ありがとう」と言う言葉は、誰かの役に立ったんだと感じれる言葉であり、その言葉の力がまた新たな「誰かのために」を生んでいくのかもしれませんね。「権力という強い武器を急に持ってしまっただけで、それを振りかざしてしまうのが、人間の本質なのかもしれないと山浦氏は言うのです」とありました。力を持ってしまうこと、本当に気をつけないといけないことですね。周りに指摘してくれる誰かがいないと人は自分を見失ってしまうのかもしれませんね。

  2. 「良好な間柄だから言わなくても伝わっている」という考えは、ついよぎってしまう考え方のような気がします。私も「言わなくても態度で伝わっているだろう」と勝手に決めつけてしまう時がありますが、その考えは、相手に負の感情を抱かせる可能性があるものだと再認識しました。
    私自身、「権力」とは無縁のポジションにいると思います。しかし今後年齢やキャリアを重ねていくうちにつく地位や権力を振りかざさすような人にならず、対処法を今のうちから学んでいきたいと感じました。山浦氏の言う、人間の本質から外れてみたいです。

  3. 「暗黙の叱責を受けている」と、感じさせている可能性も否めませんね。「疎遠な間柄だから言わない、良好な間柄だから言わなくても伝わっている」では良好な関係性は築くことはできないということを肝に銘じたいと思いました。また、人を前向きにする日々の言葉の大切さを痛感します。そして「立場が人をつくる」というのも、良い意味でばかり使用していました。ここにもデメリットが存在しているということで、自発的な責任感が誤った方向に向かわないよう、第三者の目があること、気持ちの良くない意見を言ってくれる人を大切にすること、異なる意見に耳を向ける姿勢を忘れないことなど、改めて考えさせられました。

  4. 上司と部下の関係がどのようなものであっても、やはりコミュニケーションはしっかりと取らなければいけませんね。このことは私もつくづく感じています。また、つい仲のいい人ほど、厳しいことも言っても大丈夫ではないかと甘えてしまうことも多々あります。あくまでフラットに見ながら関わるという事を忘れてはいけないのだろうと思います。また、今回「権力」というのもキーワードとして挙がっていました。これは「不満とうまく付き合う」ということと大きな関係があるように思います。権力の難しさというのは「気付いたときに知らず、振りかざしているときがある」ということがあるように思います。これは上司部下、先輩後輩、様々な関係性にも降りかかってきます。気づいたら後輩が気を使っていたということはよくあるのではないでしょうか。いかに自分を客観視できるかという事でもあるように思いますし、「不満を感じる」中で気づくこともあるように思います。何事も真摯で誠実な姿勢がこういった姿勢の狂いを正してくれるような気がします。人から出ているシグナルをどう受け止めるかは大切なことですね。

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