上司からの対応

ポジティブな効果をもたらす2つの条件の2つ目は、「良好な人間関係」です。部下の責任感を高めたのは、「上司との人間関係」が良好な状態で形成されていたときだったそうです。上司がほめどころをほめると、部下の責任感は確かに高まっていきました。世間一般で言われている通り、ほめることは“良い”ことです。しかし、非常に重要で注意しなければならないのは、このほめ言葉のポジティブな効果は、そもそもの人間関係が良好に築かれているときに限った話だということでした。この実験の結果で言えば、出会ってすぐの10分間で形成された関係性が、その後の仕事に対する取り組みの姿勢をポジティブな方向へと変容させたことが、それにあたります。しかも、1回目にほめたときよりも、2回目にほめたときにはさらに資任を持って、手を抜かずに取り組もうという意識が高まったのです。

ところが、上司との関係性が十分に築かれていなかったときには、同じ言葉でほめたにもかかわらず、部下の責任感は初期値よりも低下し、その状態が維持されたのです。つまり、そもそもの人間関係が整っていないところでほめたとしても、ポジテイプな効果を持たないどころか、仇になることすらありうるということです。部下にしてみると、仕事を始める前の上司の対応や雰囲気からすると、ほめられているとは思っていなかったのではないかと山浦氏は考えています。

この結果は、上司からの想定外の対応に対して、部下が戸惑いを感じ、また上司の真意に対して疑念を持つことになったことによると、彼は考えています。この研究で明らかになったことを山浦氏は次のようにまとめています。

「ほめどころをほめることで、部下の責任感やモチベーションを高められる。」「人間関係の豊かな土壌がないところでどんなに美辞麗句を並べても、相手の心には響かない。」です。

山浦氏は、職場の中で、関係性が良好だと思える部下、あるいは後輩を思い浮かべてみてくださいと言います。あるいは、上司と比較的うまくいっているというならば、その上司を思い浮かべてくださいと言います。そして、「最近、あなたは職場でその人をほめましたか?」、あるいは「ほめられましたか?」と問うています。

さらに彼は、部下から時間をかけて練り上げられた企画書や試作品があがってきたとき、「それを見たあなたは、どのようなコメントを返しましたか?」、あるいは「上司からどのようなコメントが返ってきましたか?」と問うています。もしかしたら、次の指示が飛んできただけで、労いのひと言もなかったかもしれないと言います。「職場でほめられることはないよなぁ…」という状態が、“ふつう”になってしまっているようにすら感じることがあるのではないかと言います。

上司の立場にある人は、「言わなくても私が“良い”と思っていることくらいは、長い付き合いの中だから、雰囲気で伝わっているだろう」「悪いことは、早く伝えておかないと大変なことになる。でも、ほめるのは、この仕事がひと区切りになったときでいいだろう」と考えているうちに、結局は伝えそびれてしまったということはないでしょうか。

上司からの対応” への4件のコメント

  1. この内容を見て、森口先生が以前おっしゃっていた「その子との関係性ができていない保育者が『〜をして』と促しても、聞き入れてくれない」と言う話を思い出しました。褒められることもそうで、関係性ができているからこそ、ポジティブな結果に繋がるのだと感じました。
    今日ある行事の説明会を保護者向けに行ったのですが、説明会後、同じ担当の先輩職員が「お疲れ、良くやったね」と労ってくださったことで、純粋に嬉しくモチベーションも上がりました。自分も後輩に、労いの言葉をかけられるような先生になりたいと思いました。

  2. 最近、運営上の問題が多々明るみになり、その信頼回復のために動いています。「言わなくても私が“良い”と思っていることくらいは…」「悪いことは、早く伝えておかないと大変なことになる。でも…」といった思いは、少なからず生まれてしまっていたかと思います。これくらい大丈夫だろうといった慢心は、少しずつお互いの関係性を蝕み、修正しようとしても気づいた時には大きな労力を必要とする段階までいってしまうのだろうと感じます。「最近、あなたは職場でその人をほめましたか?」という問いには、大口を開いてYesと答えられません。褒めどころを褒め、良好な人間関係が築かれるように「人間関係の豊かな土壌」を耕したいです。

  3. 働く上で、信頼関係を築くことは、一番意識していることかもしれません。信頼関係ができていない相手からの言葉はなかなか伝わらないということを実体験からでも感じます。そのためには、やはり日頃のコミュニケーションの蓄積なんだろうと思いますし、ある程度の時間も必要なのではないかと感じています。人はどのような人に信頼や信用を抱くのか、明確に言葉にする難しさもありますが、やはり仕事の上では、その人の働く態度や姿勢でもあるのかもしれませんね。きれいな言葉ではなく、態度ということは意識して、働きたいです。

  4. いくら褒められることがあったとしても、関係性が築かれていない人に褒められたところで、その言葉には裏があるように感じてしまうこともよくあるように思います。ポジティブなことが結果的に仇になってしまうというのは、本末転倒です。「ほめどころ」というのはそれほどの影響がうまれてしまうのですね。。注意することや批判をすることはすぐにできることに比べ、褒めるということはなぜ自然にできないのでしょうかとふと感じました。そもそもそういった経験値が少ないからなのか。意識というものが足りないからなのか、それとも両方なのか。なににしても、見方を変えるということをもっと自分自身意識していかなければいけないのだろうなと思います。

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