リーダーとの関係性の質

組織には「意志の強い人」ばかりが集まっているわけではありません。さらに、自分の意思を通しにくい状況もあったり、自分のやりたい仕事や得意な仕事ばかりができるわけではなかったりするため、チームの中にモチベーションの凸凹がいつ生まれても、まったく不思議ではないと山浦氏は言うのです。

スポーツをやっていたことがあればわかるでしょうが、合宿のときのあのきついトレーニングを繰り返すのは、考えただけでもうんざりするものだと言います。そういうときにはトレーニングに取りかかることすら、どうしても億劫になってしまいます。ところが、自分の中ではブレーキがかかった状態にもかかわらず、いつしか一生懸命になっていることがあるから人間は不思議だと言います。おそらくそれは、コーチ陣や仲間たちなど周囲からの影響力、他力の部分によるものではないかというのです。チーム全体の雰囲気や規範が、モチベーションに影響を与えると言います。あるいは、チーム外、例えば、家族や地域の人たちなどからの影響も、多分にあるかもしれないと言います。こうして、自家発電型の部分に、他力本願型の部分からの刺激が組み合わさって、メンバーの行動が生まれると言うのです。メンバー一人ひとりの意志の強さに頼らず、チームのパフォーマンスを上げるためには、「メンバー同士が刺激し合う関係性」をいかにつくるかが重要になってくると言うのです。

リーダーとの関係性の質が良ければ、高水準のパフォーマンスを期待することができるという、確固たる研究結果があるそうです。アメリカの心理学者グラーエンたちのフィールド実験をきっかけに、リーダーとメンバーとの人間関係の質に関する実証研究が本格化したと言っていいのではないかというのです。

この研究の対象者は、アメリカ中西部にある、政府軍事施設で働く職員、ほぼ全員が女性で、同じ仕事内容に従事する人たちでした。彼女らに、4つの条件が設定されました。〔条件1〕は、職務デザイン・トレーニングの条件です。セミナー形式でのトレーニングが行われました。講義、職務状況の変更や問題点に関する討議を主軸にして構成された内容で、6週間実施されました。〔条件2〕は、リーダーシップ(リーダーとメンバーとの関係性)のトレーニング条件です。この条件では、積極的傾聴スキルを高めながら、上司と部下がお互いを理解し合うこと、そして支援的な関係性の構築を目指すことに、主眼が置かれた内容でした。

この条件に割り当てられた人たちは、講義や現場事例にもとづく討議、ロールプレイからなる構成のプログラムを、6週間実施しました。〔条件3〕は、これら2つのトレーニングを組み合わせた混合条件です。〔条件4〕は、統制条件、成果の評価、意思決定、コミュニケーションに関する一般的な情報提供です。各条件に割り当てられた対象者たちには、職務態度や満足感、関係性の質を問う項目についてたずねました。

結果は、これらいずれの指標についても、〔条件2〕のリーダーシップ・トレーニング条件では、他の条件よりもポジティブな効果を示しました。これが、組織やチーム運営における、上司—部下の関係性の質が高いことによる有効性を示す最初の知見と言われています。その後の研究でも、上司—部下の関係性の質は、パフォーマンス、協力行動、職務や上司に対する満足感、組織への帰属意識、離職など、いずれの変数とも望ましい方向で有意な関連が認められているそうです。