資源交換

山浦氏は、組織心理学の観点から、チームの温度差が生まれてしまう原因と、温度差を埋めてチーム全体のモチベーションを高めていく方法について考察していきます。そこでは、上司と部下の関係を「資源の交換」という視点から、ひもといていくようです。ここで言う「資源」とは、物質的な資源と、心理・社会的な資源をともに含みます。

上司から部下に与えられる資源には、例えば、昇進・昇給や情報、あるいはプロジェクトや教育プログラムへの参加のチャンス、信頼などがあります。逆に、部下から上司に提供される資源もあると言います。例えば、成果や営業成績、仕事に費やす時間のほか、労力、やる気、尊敬の念や行為などがそれだと言います。

上司と部下は、出会った瞬間から資源の交換を始め、関係性(資源交換にもとづく関係性)は比較的早いうちに形成され、その後安定し維持されていくと言われているそうです。このことを、山浦氏は、実証した3つの興味深い心理学の研究を紹介しています。最初は、彼が所属していた研究チームで行った実験です。

職場をシミュレーションして、初対面の上司と部下とで仕事をしてもらいます。上司役(社会人のサクラ)は、部下の監督・指導をします。部下役の学生たちは、「目の前にいる初対面の上司と、これから一緒に仕事をすることになる」と事前の説明を受けます。一つの条件では、上司と部下は時々言葉を交わします。その内容は、「最近、寒いね」「調子はどう?」などのいたって普通の日常会話です。

もう一つの条件では、上司は忙しそうにパソコンに向かっており、仮に部下から話しかけられたとしてもそっけない返答しかしません。その後、部下役の学生たちに、上司に対する関係構築の程度(例えば、「仕事をするのによい関係が作られていると思うか」「仕事を一緒に楽しくやっていけそうか」、「気が合いそうか」)を測定する質問項目に回答してもらいます。

その結果、日常会話をした上司のほうが、そっけない上司に比べて、統計的に見ても有意に高く評価されたそうです。さらに驚くべきことは、この上司に対する評価の差を生むまでの時間は、たったの10分間だったということでした。

これにかかわる初期の研究で、経済学者ライデンたちのグループは、企業で働く人たちにアンケート調査をしたそうです。この調査では、上司が新入社員に対して期待し、行為を抱き、自分と類似点があると認識すると、2週間後により良い関係性に発展することが明らかになったそうです。最初の実験と同じように、上司がとっても、部下の最初の印象が、その後の関係に大きな影響を与えるという結論が出たそうです。

部下にとっては、上司による10分間の雑談がとても重要であるようです。また、上司にとっては、新入社員の第一印象がその後の関係に大きな影響を与えるようです。ともに、出会って間もなく、その後の関係性が決まるという実験結果があるようです。その実験が、3つ目の実験的な調査です。