やさしく、寛容で

「自分は妬まれている(のではないか)」と感じとることには、相手への援助行動を促す機能があることが示されました。さらに実験は何度も行われ、相手が悪性の妬みを抱いていると感じたときのみ、援助行動が促されることがわかりました。相手が敵意を自分に向けていると思うとその相手を助けようとし、自分に憧れている(良性の妬みを抱いている)相手には、問題が進むごとに援助がなされなくなっていきました。

この結果を受けて、ヴァン・デ・ヴェンたちは、妬まれることに対する恐れを抱くことは、集団に役立つ機能であると結論づけたのです。一見、悪にまみれたように見える妬みの感情ですが、この感情のおかげで、私たちは人間関係を維持する必要性に、改めて気づくことができ、自分の心の安寧と相手との関係維持を、両立しうる手段を考え出す知恵を授かっているのかもしれないと山浦氏は考えています。

もしそうであるならば、自然災害や経済変動が未曽有のレベルで襲いかかってくる時代でこそ、活かされるべきものだというのです。なぜなら、自然環境や社会の変化に伴って、人間同士の間にさまざまな格差が生じ、誰かが誰かを排斥する心を生んでいるからだというのです。

妬みは人間の心の一側面にすぎませんが、そこにかかわる当事者それぞれの立場を理解することは、不必要な諍い・軋轢を未然に防ぐことに役立つはずだというのです。こうした人間の姿を知ることは、身近な職場に即した具体的で、有効な対策やアイデアを生み出す可能性を高めることでしよう。個人だけでなく、他人とのかかわり、社会や組織にあるネガティブな状態をポジティブな状態につくり変えていく…それを実現するために、どんなときでも自分だけはやさしく、寛容であろうとする強さを大切にしたいものだと山浦氏は言うのです。この「妬み」に関しての締めくくりは、どこかブレグマンと同じような考え方ですね。山浦氏は、このようなポイントでまとめています。

・人間は感情に振り回されて、非合理的な行動をとってしまう。なかでも「妬みの感情」は人に破壊的な行動をとらせる力を持っている。

・妬みを抱えやすいタイプの人は、自分の目標を高く設定し、目標に向かって突き進むことかできるタイプの人でもある。

・リーダーの立場から見ると、条件さえ整えれば、妬みを抱えるメンバーはチームの起爆剤になり得る。

・特に「妬む人」と「妬まれる人」が手を組んだときに、「妬む人」のパフォーマンスが大きく向上し、より良い関係性構築のチャンスが生まれる。

次に、組織に蔓延するネガティブな関係の中で「温度差」について取り上げていきます。山浦氏は、「組織をまとめるのが難しい」というときには、その多くは、メンバーのモチベーションに関することではないかと言います。もっと正確に言うと、組織内の全員のモチベーションが低いというわけではなく、モチベーションがある人たちとない人たちとの「温度差」を感じ取っているのではないかと思っていると言います。温度差のある集団が、一つの目標に向かって物事を進めるのは、非常に難しいことだと言います。この温度差を生み出すのは、どんな要因なのでしょうか?