妬みの力

つんくさんは、ミスター・チルドレンの桜井和寿さんへの憧れとジェラシーから、ライバルに勝つための方策を編み出して成長していったそうです。結論から言えば、これこそが、妬む(妬みがちな)人の生き残り・成長戦略だと山浦氏は言うのです。妬みには、実は、プラスに作用する心理的な機能が備わっていることが実証され、その仕組みが明らかになりつつあるそうです。

相手と競い合う心理や、切磋琢磨の状態がその典型です。妬みを持つ人ほど、実は「あの人に負けないように、少しでも追いつけるように」と自分のパフォーマンスを高めようとしているかもしれないというのです。マネジャーや経営者の視点で見れば、妬みは、組織内で(良い意味での)ライバル関係を作り出すことを可能にする原動力なのです。

ドイツの心理学研究者たちが、マラソン大会の2日前に出場者から研究参加者を募って、妬みの特性を計測するアンケートを実施し、目標タイムを答えてもらいました。その結果、良性の妬み傾向がある人ほど、目標タイムを高く設定し、実際にゴールしたタイムも良かったそうです。

日本の心理学研究者もまた、大学生を対象に「妬みやすい人のパフォーマンス」を調査したそうです。この実験は、大学の講義時間の一部を使って行われました。まず実験参加者たちは、自分の妬みの測定項目を含むアンケートに答えました。さらに、1週間後の試験で何点を目標にするか、その得点を記入するように言われました。1週間後、予告のあった試験が実施されました。「この試験の点数は成績に反映される」と伝えられたので、実験参加者たちは真剣に問題を解いたはずです。その結果、ドイツの心理学研究者たちと同様に〔良性の妬みが、高い目標得点とそれに伴った良好な成績につながった〕という結果が得られたそうです。これらはいずれも、妬みを感じることによって、自分自身を研鑽することができる可能性を示しています。

韓国の経営学者リーたちは、妬む人が取りうる行動には、大きく3種類があると言います。1つ目は、「妬みのターゲットXさんを引きずり下ろすこと」。

例えば、Xさんが仕事で失敗するように邪魔をする、Xさんの貢献度を差し引いて上司に報告する、社内にゴシップを流すなどです。この方法であれば、妬んだ人は特段努力をすることなく、自分より秀でているXさんに追い付くことができます。ただ、Xさんとの信頼関係はその後崩壊し、それによって職場では仕事がやりにくくなる、周囲も腫れ物に触るような余計な気遣いが必要になるなど、大小さまざまな損失が生じそうです。

これらの妬みの悪影響は、不用意に競争的な環境や機会を作り出すと、観察されやすくなります。管理職者や企画担当者が、社内の活性化を意図してコンペティションを行うことは常套手段ですが、意図しない副作用の方が大きくならないように見通しておくべきだと山浦氏は注意します。

2つ目の行動は、相手を避けるというものです。しかし、この行動もまた、職場やチームでの協力関係を築き、共通目標を達成するという目的には適いそうにないと言います。3つ目が「Xさんにアドバイスをもらって積極的に学ぶ」という行動です。この行動であれば、妬む人のパフォーマンスは改善されます。しかもXさんは、「(実際には妬まれている相手から)尊敬されている」と認知できるので、お互いの関係性は維持され、もしかするとそれまでよりも良好な人間関係を築けるかもしれないと言います。