妬みの実験

妬みの感情の研究について、アメリカの心理学者デステノの研究グループの論文で発表されました。実験参加者は1人で部屋に入り、その後すぐ参加者のパートナーとなる異性が入ってきます。実は、このパートナーは実験のために用意されたサクラです。パートナーは、実験参加者との会話を楽しみ、仲良くなるようにふるまいます。しばらくして2人には、「この実験は、1人で課題に取り組むときと、ペアで取り組むときのパフォーマンスの違いを検討するものです。1人でやるかぺアでやるかは、自由に決めてもらって構いません」と伝えられます。するとパートナーは、実験参加者に「一緒にやろう」と誘います。

2人が楽しく課題を行っていたところ、3人目が「遅れてごめんなさい」と言いながら現れます。この人は、実験参加者と同性で、実はライバル役のサクラです。もちろん、このことも実験参加者は知りません。3人には再度、「この実験の課題は、1人で行っても2人で行っても構わない」と伝えられます。ここから、実験参加者の運命が分かれるのです。

一つの条件〔統制群(操作が加えられていない比較対照のための群)〕ではパートナーが「大学医療センターに予約していたことを忘れていた!」と言って、部屋を出ていきます。こうして、残った2人は個別に課題を行うことになります。

これに対して、もう一つの条件「妬み生起の実験群(操作が加えられた群)」では、なんとこのパートナーは後からやって来たライバルの異性に「もしよかったら一緒にやろうよ」と声をかけます。声をかけられたライバルはそれを承諾し、実験参加者とは声の届く距離のところで作業を始めます。

どちらの条件でも、実験参加者は1人で課題に取り組むことになるのですが、その原因が違っています。一つは、たまたまの出来事によるものでしたが、もう一つは、ライバル出現によるものだったわけです。

この後にもうひと押しの手続きが施されます。味覚のテストという名目で、「パートナーとライバルが、それぞれ食べるものに、実験参加者がホットソース(激辛の刺激物)で味付けできる」という機会が与えられるのです。パートナーとライバルは、ホットソースが嫌いです。そのことを知った上で、実験参加者は、いったいどれほどの量をかけるのか…その分量が測定されました。

まず〔妬み生起の実験群〕に割り当てられた人たちは、自分を裏切ったパートナーだけでなく、そのパートナーに裏切るよう仕向けたライバルに対しても、敵意の混じった妬みの感情を表しました。また、薄情な裏切りを経験したとき、この実験に参加した人たちは自分をネガティブに捉えていました。そして、そのことが妬みを増幅させ、相手や直接的な関係者に対する攻撃行動を促していたのです。

では、その敵意によって加えられたホットソースの量は、どれほどだったのでしょうか。結果は、〔統制群〕の平均分量が1.44gだったのに対して、〔妬み生起の実験群〕の平均分量は3.41gでした。2.4倍近くのホットソースが加えられたのです。

ちなみにこの傾向は、女性( 1.67g)よりも男性(4.24g)で顕著でした。悪意ある妬みが、いかに私たちの心の奥底で活動し、意地悪で破壊的な行動を操っているのかを垣間見るような実験結果です。集団の中の1人が妬みの感情を抱いた結果、妬む人も妬まれる人も、誰一人として得をしない非合理的な行動が生まれてしまったのです。