五つの観点

組織というものは、一つの社会であると私は思っています。ですから、組織の在り方というのは、社会を形成するうえで関連するものだと思っています。ともに、人間関係であり、人と人とのかかわり方であるのです。保育という営みは、将来社会の形成者としての資質を備えていくという教育を行うことであるとしたら、個人が担当してそれに対応するのではなく、社会として、社会ネットワークの中で、行っていくことが必要になっていきます。それを、一つの施設としての役割として、組織という社会からどうかかわっていくべきかを考えていくことに意味があると思っているのです。ですから、山浦氏が提案する組織心理学によって、「自分を守り、人を動かす武器になる」組織にしていく必要があるのです。

彼は、人間関係において、ネガティブな関係を極力減らすと同時に、ポジティブな関係を構築することが重要だと言います。それを五つの観点から考えていきます。「妬み」「温度差」「不満」「権力」「信用(不信感)」の五つです。なぜ、山浦氏がこの五つを挙げたかというと、これらのネガティブな要素が、見えない空気となって、組織を支配しているからだというのです。しかし、組織を前に進めるためには、これらを放置するわけにはいかないと言います。そんな組織の人間関係に立ち向かう人や、個人では成し遂げられないことを集団の力で実現したいすべての人にとって、組織心理学を理解していく必要があるというのです。

最初のテーマは、「妬みを中和し、モチベーションを引き出せ」というものです。この感情を含め、人の心の中にある見えにくい感情ほど厄介なものはないと言います。「妬み」は、他の感情と違って、誰もが「社会的に受け入れられにくい不快な感情」と認識しているため、普段は心の奥底に潜ませ、蜜やかに隠し持っているものだと山浦氏は言います。しかし、これは、人間の感情の根源であり、他人の足を引っ張るなどの非合理的な行動を促す元凶として考えられてきました。山浦氏は、こんな例を挙げています。

例えば、敵意を抱きやすくなったり、妬んだ相手も貶めたりします。間違った情報や質の低い情報を伝えたりするのも妬みが原因ですし、最近ではネットいじめの根底に、この感情があるということもわかってきているそうです。当然、他人だけでなく、自分自身を苦しめることにもなります。例えば、抑うつや不安感が高まりやすくなると言われています。

さらに、妬みの感情には、ネガティブな側面だけでなく、モチベーションにつながるポジティブな側面があることがわかってきているそうです。厄介な妬みをより良い方向に向ける方法を、山浦氏は提案しているのです。

それを考えるうえで、まず、「人間は放っておけば、どうしようもなく非合理的な行動をとってしまう」「非合理的な行動や習慣は、感情によってもたらされる」ということから考えていきます。彼は、私たちの毎日の行動をよく振り返ってみると、実に多くの非合理的なことが転がっていると言います。「(やるべきことだと)わかっちゃいるけど、やらない、したくない」という具合にです。その背後には、快楽を求めて誘惑する感情や、心の痛みを軽減させようとする動機づけがあります。

この問題は、よく最近、非認知能力の中でとても大切な力である実行機能とか、エモーショナルコントロールとか呼ばれているものです。いわゆる、将来の利益より、目の前の誘惑に負けてしまうという行動です。