善行は伝染する

2010年、二人のアメリカの心理学者が優れた実験によって、善行は伝染することを明らかにしたそうです。彼らは、お互いを知らない120名の被験者が参加するゲームを企画しました。被験者は四つのグループに分けられました。初めに、各自、いくらかの現金を与えられます。グループの基金に寄付するかどうか、いくら寄付するかは自分で決めます。第一ラウンドの後、全てのグループはシャッフルされ、第二ラウンドでは、前回同じグループだった人とは一緒になりません。

次に起きたのは、正真正銘、お金が増えるトリックでした。第一ラウンドで、誰かが1ドル多く寄付した場合、そのグループの他の被験者は、次のラウンドで、平均で20セント多く寄付しました。グループのメンバーが前回とは違っていたにもかかわらずです。この効果は第三ラウンドでも見られ、被験者は平均で5セント多く寄付したのです。最終的に、1ドルの寄付が2倍以上の寄付を導きました。

ブレグマンはしばしば、この研究のことを振り返るそうです。その教えを覚えておきたいからです。善行は池に投げ込まれた小石のように、あらゆる方向に波紋を広げます。この実験を行った研究者の一人は、次のように述べています。「寛大さがソーシャルネットワークを通して、どれほど連鎖していくかは、わからないが、数十人、あるいは数百人に影響する可能性もある」

優しさは伝染するようです。それは非常に伝染しやすく、ただ遠くから眺めている人にまで伝染します。その影響を最初に研究した心理学者の一人は、ジョナサン・ハイトだそうです。1990年代末のことでした。彼は論文において、老婦人の私道の雪かきを手伝った学生について語っています。その学生の友人は、この私心のない行為を見て、後にこう記しています。「ぼくは車から飛び出して、彼を抱きしめたくなった。歌って走って、スキップして、笑っているような気分だった。ただただ快活になった。誰彼なく褒めたくなった。美しい詩やラブソングを書いたり、子どものように雪の中で遊んだり、彼の善行を誰もに話したくなった」

ハイトは、親切な行動が、人々を驚かせ、感動させることを発見したのです。彼が被験者たちに、この種の経験からどんな影響を受けたか、と尋ねると、彼らは、自分も外へ出て、誰かを助けたくなった、と答えたそうです。

ハイトはこの感情を「高揚(elevation)」と呼んでいます。人は、単純な優しい行為を見ただけで、文字通り、心が暖まるようにできています。さらに興味深いのは、人からこのような話を聞いただけで、そうなることです。まるで心のリセットボタンが押されて、冷笑的な気分が一掃され、この世界が再びはっきり見えるようになるかのようだと言います。

最後の10条は、「現実主義になろう」です。

最後に、ブレグマンが最も大切にしているルールを、私たちに教えてくれます。彼が、この本を書いた目的の一つは、現実主義という言葉の意味を変えることだったそうです。