人間関係の凸凹

上司と良好な、関係性の質が高い、内集団にいる部下は、そうでない、関係性の質が低い、外集団にいる部下に比べて、客観的なパフォーマンスや評価が高く、キャリア発達もスムーズです。また、仕事に対する満足感や、組織へのコミットメントも高い水準にあります。これは、良好な関係にある部下の方が、自分自身が何を任されているのか、仕事上の役割を明確に認識できることによると言います。一方、外集団にいる部下の仕事に対する満足感や組織へのコミットメントは、内集団にいる部下より低い水準になってしまうため、人間関係の凸凹が温度差を生んでしまうというのです。

ハーバード大学の「グラント研究」は、良好な人間関係を築くことが人生においていかに重要な意味を持っているか、極めて力強いエビデンスを提供してくれているそうです。1938年にボストンで始まって以来、700人を超える対象者の人生を観察した、人生にまつわる最長の研究です。

この研究では、2つのグループの人たちの生活の様子を、つぶさに記録しています。一つのグループは、ハーバード大学卒業生です。在籍中からこの研究に協力し、途中、第二次世界大戦、兵役などを経験しています。もう一つのグループは、ボストンで最も貧困な地域に住む少年たちです。困窮し、問題の多い貧困家庭の出身であったことから、調査の協力対象者として選ばれたそうです。

それぞれのグループが経験してきた仕事、結婚や育児などのライフイベント、老後、さらには戦争や災害の経験など、10代の頃から老年までをさまざまな側面から追いかけた貴重な資料の数々だそうです。

例えば、対象者やその家族へのインタビュー、医療記録、血液サンプル、脳スキャン、社会的・経済的な状況、ファミリー・ヒストリーなど、ありとあらゆる内容のデータが蓄積されていると言います。研究者たちは、この膨大なデータから、人の幸福や健康の維持に大切なものが何であるのかを見出そうとしたのです。そして、このデータが示したこと—それは、周囲とのあたたかな人間関係やつながりこそが、私たちの幸福と健康を高めるという結果だったのです。

人生の貴重な時間の多くを費やす職場において、単なる仕事上の関係であっても、その質は、部下にとっても、そして上司にとっても、自身の健康や幸福感を決める大切なものだと言っているのです。

モチベーションは、行動に向かわせるプロセスのことです。行動は、組織のパフォーマンスを直接的に左右するので、その源であるモチベーションに、私たちの関心は常に寄せられています。同時に、部下たちの間に生じるモチベーションの差は、いつでも拡大する状態にあることを、私たちは念頭に置いておかなければならないと言います。なぜなら、モチベーションは、それぞれの部下個人の中で変動していますし、組織内・組織外からの刺激によっても大きく変動するからだというのです。

モチベーションには、内発的動機づけといわれる自家発電型の部分と、外発的動機づけといわれる他力本願型の部分があると言います。前者は、取り組む課題に興味があったり、得意だったりする場合や、向上心が高いタイプのパーソナリティを持っている場合などにあてはまり、周囲の力がなくても自分を動かしていくことができます。

人間関係の凸凹” への4件のコメント

  1. 周囲との温かな人間関係が、人生に渡るウェルビーイングに関連してくるとなると、より一層非認知能力の重要性を感じます。他者の気持ちがわかったり、それに応えたり自分を主張したり、上手に頼りながら相手の得意分野を活かしたり、社会の形成者として責任を持ちながら、身近な人とより良い関係性を築き、好きなことを謳歌する。そんな人生を歩んで行きたいですね。「極めて力強いエビデンスを提供してくれている」というように、これまで解明できてこなかった『幸せ』というジャンルも数字として比較対象にすることができる技術に驚きます。

  2. 「周囲とのあたたかな人間関係やつながりこそが、私たちの幸福と健康を高めるという結果だったのです」とありましたが、このことは、人であれば非常に納得できるものですね。しかし、その逆もしかりで、人間関係によって傷つき、落ち込んでしまうこともありますね。人の悩みのほとんどは人間関係によるものでもあるのかもしれません。「良好な人間関係を築くことが人生においていかに重要な意味を持っているか」ということを私たちはどこかで感覚的にも理解しているからこそ、良好ではなくなった時に悩むのでしょうし、良好になるようなアプローチを自然としているのでしょうね。良好な人間関係を作るというのは生きること、そのものですね。

  3. 離職の最大の理由は職場の人間関係、というのは保育界だけのことではないようです。人間関係が離職につながるということは残念なことです。まさに、今回のブログタイトル「人間関係の凸凹」のなせるわざ。キャリアアップのための離職であればいいのに。「上司と良好な、関係性の質が高い、内集団にいる部下は、・・・仕事に対する満足感や、組織へのコミットメントも高い水準にあり・・・自分自身が何を任されているのか、仕事上の役割を明確に認識できる」。何はともあれ良好で質の高い関係が職場内の人間関係に維持されることが大切であることがわかります。「周囲とのあたたかな人間関係やつながりこそが、私たちの幸福と健康を高める」。わかります。この逆のことを想像すると気分が悪くなります。それにしても1938年以来続いている「ハーバード大学の「グラント研究」」、これは凄い!とはいえ、導き出された結論は、私自身、そうなるだろうな、というものです。研究とは、わかりきったようなことも一々検証していく作業なのですね。

  4. 「人の幸福や健康の維持に大切なもの」が「周囲とのあたたかな人間関係やつながりこそが私たちの幸福を健康を高めるという結果だった」というのはとても考えさせられる結果ですね。今の世の中でうつ病や自殺など、様々な部分で幸福を感じれなかったり、健康を害するということが問題になっていますが、それは社会があたたかな人間関係を構築するような枠組みになっていないから起きている問題ともいえるのでしょうか。逆にいえば、暖かな人間関係が作れるような人材をつくることが社会を幸せにしてくれるようになるといえるのかもしれません。以前の臥龍塾セミナーでも異年齢にすることでいじめが無くなるといったことや、多様性がもてたり、自然と関係性が作られたりということが紹介されていました。こういった経験が結果として社会につながる力となるのであれば、社会をつくる形成者というのは成績や学歴によってもたらされるものではないということが分かります。

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