実施の原理

④ 転移可能性:ビッグ・アイディアやキー・コンセプトなど、各学問分野を底支えする重要な概念の発達を促すとともに、スキルや価値観及び態度などの役割を認識できるよう、カリキュラムを構造化すること。

⑤ 真正性:必要に応じて、カリキュラムを現実社会と関連づけていくこと。そのためには学問的な原理(ディシプリン)に基づいた知識を習得するとともに、教科横断的あるいは協働的な経験が必要になってくる。

白井氏は、それぞれの原理について次のように考えているようです。まず、「一貫性」とは、各学問分野における適切な学習順序を重視するということだと言います。カリキュラムを策定する場合には、各教科の学問領域ごとの「タテ」の一貫性が重要ですが、教科横断的な視点で「ヨコ」の一貫性も必要だというのです。

「厳格性」についても、様々なことが求められると言います。学習するコンテンツのそれぞれについて、生徒の発達段階に応じた年齢相当性を考慮することは当然必要ですが、例えば、同じ数学のコンテンツであっても、国によってカリキュラムに位置づけられている学年が大きく異なる場合もあるそうです。例えば、「合同と相似」、「方程式と公式」というトピックについて、各国でどの年齢で取り上げられているかを比較してみると、これだけでも相当な違いが見られます。例えば、「合同と相似」については、スペインでは11歳、12歳で扱われていますが、カナダやハンガリーをはじめ多くの国では、中学校以降の段階を含め、より多くの年齢で扱われています。また、「方程式と公式」については、多くの国において、小学校から高等学校に至る段階まで長期間にわたって扱われていますが、特に日本では比較的早い段階から中心的に扱われているようです。こうした比較分析については、今後、まだ多くの研究余地があると白井氏は考えています。

「焦点化」は、カリキュラム・オーバーロードの問題に密接にかかわる原理だと言います。むやみに多くの内容を盛り込むことよりも、精選することによって、より深い学びにつながることが期待されるというのです。もっとも、取り上げる内容の数が、単純に少なければ少ないほど良いということにはならないのも当然であり、バランスが重要だと言います。

「転移可能性」については、転移といっても「近い転移」から「遠い転移」まで様々なものが想定され、とりわけ「遠い転移」のほうが難しいものとなると言います。一方では、「遠い転移」が可能になるような知識やスキルを身につけることは、一度学んだことを、より幅広く様々な分野において活用できるということでもあり、カリキュラムのデザインにおいても、そうした転移の視点を重視することが考えられると白井氏は言うのです。

「真正性」については、実生活・実社会における課題と結びつけた真正の学びの機会を提供することで、生徒が普段学んでいる内容が、実生活・実社会とどのようにかかわっているかを理解させることで学習の意味を伝え、それによって学習に対するモティベーションを上げることが期待されると言います。

実施の原理” への4件のコメント

  1. 「転移可能性」や「真正性」という馴染みのない言葉がありました。「一度学んだことを、より幅広く様々な分野において活用できる」転移可能性は、結びつける能力と言っても良いでしょうか。ある6歳児が小さな虫に気づき、その近くに卵らしきものを発見すると、「この虫はメスかな」と言っていたのは、近い転移かもしれません。これには、大人の遊び心や発想の転換、意図的に関連するものをその場で言えるかが重要でもあるように感じます。そして、「学んでいる内容が、実生活・実社会とどのようにかかわっているかを理解させる」真正性は、「勉強」する意味や社会の一員となる上でも非常に関連する内容だと感じました。分数や割り算は、社会では「割り勘」や「分配」に使えるように、物事を平等に配分する上でも活用できることを学びを通して社会を伝えるというのも面白いですね。

  2. 整理して捉え直すことの大切さを感じました。なんとなくではもちろんないと思いますが、様々な国と比較することで、どの内容まで教えるべきなのか、それはどの年齢、発達段階に合ったものであるのかということが具体的に見えてくるように思います。同じ国で比較という実験的なことはなかなか難しいと思いますが、国同士であればやりやすいかもしれませんね。また「むやみに多くの内容を盛り込むことよりも、精選することによって、より深い学びにつながることが期待されるというのです。もっとも、取り上げる内容の数が、単純に少なければ少ないほど良いということにはならないのも当然であり、バランスが重要だと言います」とありました。これは保育においても重要になりますね。頭が大きくなりすぎないように、目の前の子どもを見るということを忘れないようにしなくてはいけませんね。

  3. 日本語に翻訳すると、何だか面倒なことになっていますね。「厳格性」・・・生徒の発達段階に応じた年齢相当性を考慮する」という説明がなければ、俄かにピンときません。「真正性」に至っては、「実生活・実社会における課題と結びつけた真正の学び」ということで、算数・数学で学ぶ「合同と相似」、「方程式と公式」が「実生活・実社会」と結び付けられ、学びが深まりそうです。まさに「焦点化」。こうして「一貫性」は縦系列、「転移可能性」は、さしずめ「関連付ける学習」に関わるような。こうしてみてくると、従来言われてきたことを言い直しているのかな、と思ってしまいます。そんなことはない!と怒られそうですが、何だかそんな気がしました。「厳格性」のところで例として出されていた学習コンテンツが国によっていつ学ぶか異なっている、これは参考になりました。

  4. 「国によってカリキュラムに位置付けられている学年が大きく異なる場合がある」とのことですが、それぞれの国によって教える部分が違うというのはなるほどと思いました。また、このことにおいて「焦点化」における「むやみに多くの内容を盛り込むことよりも、精選することによって、深い学びにつながる」ということのとらえ方が重要になってくるのだろうと思いました。その時期の子どもたちにとって、どれくらいの学びの機会を与えるのか、カリキュラムの量をどれくらいに調整していくのかというのは非常に難しいことだと思います。その中で、各国の取り組みを参考にしていくというのはありがたい情報といえるでしょう。実際、自分も海外の保育を見て、今の保育を考える新たな視点をもらったことはたくさんあります。こういったやり取りを通して、日本の今も見えますし、海外のフィルターを通して、これからの視点も見出すという意味ではこういった海外の考えかたを知り、逆にこちらも発信していくことでよりよい教育環境が模索されていく機会につながると良いですね。

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