実施する段階

次に、意図されたカリキュラムを実施する段階においては、以下の原理が挙げられているそうです。

①エージェンシー:カリキュラムが、生徒にモティベーションを与えるとともに、既有の知識やスキル、態度・価値観を認識できるような形でデザインされること。

②選択:生徒に、多様で幅のあるテーマやプロジェクトに取り組む選択肢が与えられること。また、十分な情報が与えられたうえで、自分たちでテーマやプロジェクトを選択したり、提案する機会も与えられること。

③柔軟性:新たな社会的課題への対応や、個々の生徒の学習上の必要性に応じて、学校や教師がカリキュラムを柔軟に変更、調節していくこと。

④教科横断性・相互関連性:教科等で学ぶ内容や概念が、他の教科あるいは教科横断的な内容や概念と、どのように関連しているのか、学校外の実生活とどう関連しているのか、といったことを学ぶ機会が与えられること。

としています。それを順に白井氏は説明しています。はじめに、「エージェンシー」と「選択」で挙げられているのは、いずれも、大人が設定したカリキュラムを、生徒がただ受動的に学んでいくのではなく、一人一人が当事者意識をもって学んでいくことが重視されているということです。生徒が、エ一ジェンシーを育成していくためには、そこに変革の可能性が内在されていなければなりません。すなわち、カリキュラムを実施するうえで、何か課題があったり、あるいは、さらに改善していくための方法があれば、生徒が声を挙げて、改善に向けた議論ができるような場があることが必要なのだというのです。ただ決められたカリキュラムを受動的に学ぶように強制されるだけでは、エージェンシーを育成していくことは困難です。それゆえ、テーマやプロジェクトを生徒自身に「選択」する機会を作ることも、エージェンシーの発達につながるものだというのです。

私も保育の中で「選択」を取り入れているのは、子ども達は、ただ決められた課題を受動的に行うように強制されるだけでは、「自ら考え、主体的に行動して、責任をもって社会変革を実現していく姿勢・意欲」というエージェンシーを幼いながら育成していくことが困難になるからです。何をやるのか、誰とやるのか、どこでやるのか、これを子ども自身に「選択」する機会を作ることは、エージェンシーを発達につながるのだというOECDが提案することと共通します。

次の「柔軟性」を確保していくためには、学校や教師に一定のカリキュラム上の裁量を認めることによって、それぞれが、時代の変化であるとか、地域の実情や生徒のニーズなどに応じて、柔軟にカリキュラムをデザインしていくことが可能になるだろうと白井氏は言います。

次の「教科横断性・相互関連性」については、カリキュラムにおいて、「転移可能性」や「真正の学び」について十分に考慮したうえで、それを実施の段階でも実現できるようにデザインしていくことが求められると言います。

実施する段階” への4件のコメント

  1. エージェンシーという、当事者意識を持った主体的な行動は昨今で耳にする機会が増えました。これは、社会人であっても同じことだと痛感しています。企業のトップの方の言葉のみを聞き、その人の言うと通りにやるだけで良いということではなく、自分という存在が「会社の一部」であり、自分の行いが会社の行方に大きく影響していく、そういったことを考えられる人材であってほしいと願っていることでしょう。「カリキュラムを実施するうえで、何か課題があったり、あるいは、さらに改善していくための方法があれば、生徒が声を挙げて、改善に向けた議論ができるような場があることが必要」というように、その当事者意識を持つ上では、社員の方々が声をあげられる環境、より良くするための話し合いができる環境にあることが、エージェンシーを生み出すためには重要であり、そういった環境を園でも用意しておかなくてはと思います。

  2. いかに生徒が自分で考え、自ら学ぼうとする意欲を引き出すかということの大切さを感じます。ついつい大人は何か子どもに教えなければいけないという気持ちになってしまいますが、私自身もやはり自分から学ぼうという気持ちがなければ何かを学ぶ気になれないというのは実感としてあります。そう思うと人を育てるというのは難しいというか、育てるってなんだろうと思うことがあります。私にはその自信がないのですが、ブログの内容や様々なことから感じることは、いかにその人の意欲を引き出すかということがもしかしたら人材育成ということなのかもしれませんね。そのためにはやはり相手を知るということが大切なのかなと思うと、これは子どもへの関わり方と全く同じかもしれませんね。

  3. 藤森保育セオリー&メソッドにOECDが近づいてきていることがわかります。「エージェンシー」も「選択」も、そして「柔軟性」「教科横断性・相互関連性」も藤森先生が「見守る保育藤森メソッド」の名の下、伝え続けてきたことですね。「何をやるのか、誰とやるのか、どこでやるのか、これを子ども自身に「選択」する機会を作ることは、エージェンシーを発達につながるのだというOECDが提案することと共通」です、です!このことを日本の就学前施設や義務教育学校の皆さん、気づいて欲しいです。自分たちの身近にあるのですから。藤森保育セオリー&メソッドの21世紀的意味にいち早く気づいているのが、シンガポールや中国、韓国の皆さんですね。今回のOECDがEducation2030の枠組みで示していることを日本の関係者も理解するならば、我が国において既に実践の姿があることに驚いて欲しいものです。

  4. 以前、オランダのイエナプランを見たことがありました。そこで行われている教育形態を見て、「こういった教育の進め方もあるのだ」と非常に感銘を受けたのを覚えています。そこでは子どもたちは自分で時間割を決め、自分で勉強する内容を選択します。教師から教えられる時間もありますが、その他に自習の時間が多くあります。また、日本と大きく違うのが「進級」と「留年」があるということでした。今の日本はエスカレーター式に学年が上がっていきます。その時点で受動的であるといえるのですが、分からないまま進んでいくというのはついていけない子どもからすると非常に困難なことが多いでしょうね。よく3月生まれの子どもは苦労することが多いと言われますが、これはそういった日本のシステムによるものが多くなるのだろうと思います。以前藤森先生がこれから差別の中で「年齢の差別」というのも言われるだろうというのを聞いて全くその通りだと思いました。自ら学び、当事者意識をそれぞれの生徒がもつためには教育における形態も見直す必要があるようにもオランダを見て感じました。

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