人間固有の力

3つの変革をもたらすコンピテンシーについて見てきましたが、これらに共通するのが、とりわけAIが普及する時代において、いずれのコンピテンシーも、人間にとって固有の力であるということです。例えば。「対立やジレンマに対処」するためには、複雑で曖味な文脈や状況を読み解き、理解することが求められます。しかしながら、少なくとも現在のAIの技術レベルでは、常に変化し続けるような不確実で曖味な状況に対処したり、新たな価値観を創造したり、目標の変化に柔軟に対応していく、といったアルゴリズムに落とし込むことができないことは解決できません。だからこそ、これからの教育には、とりわけ人間にしかできない力を身につけられるようにしていくことが求められますし、ここで示されている変革をもたらすコンピテンシーも、まさしく人間として求められる力なのです。

これからの教育には、これまで以上にこうした人間固有のコンピテンシーの育成に注力していくことが求められるのであり、その基盤としてのカリキュラムの重要性が改めて認識されるべきなのです。例えば、「新たな価値を創造する力」にしても、それにつながる知識やスキル、態度及び価値観は、芸術など特定の教科だけで教えられるというものではなく、国語や数学、体育など様々な教科において横断的に教えられているのです。また、これらのコンピテンシーは学校だけで学ぶものでもなく、家庭や地域も、生徒にとって重要な学習の場であることにも留意する必要があるというのです。

前述の「エージェンシー」にしても、「変革をもたらすコンピテシー」にしても、それらを発揮していくためには、しっかりとした発達の基盤が必要になります。具体的には、リテラシー(読み書きの能力)やニューメラシー(計算など数学の基礎的な能力)はもちろん、論理的思考力や創造性、他者との協働性や自己管理、さらには倫理なども含めた社会・情動的な基盤も必要になります。また、そもそも、心身の健康がなければ十分に学習することも、力を発揮することも難しいだろうと言います。

ラーニング・コンパスにおいては、発達の基盤を、「カリキュラム全体を通じた将来の学習の前提となるような必須の条件や中核的なスキル、知識、態度及び価値観」として定義していますが、2030年に向けて必要となるコンピテシーを身につけていくためにも、また、カリキュラム全体をしっかりと学んでいくうえでも不可欠なものです。Education2030プロジェクトでは、特に3つの重要な基盤として、①ニューメラシーやリテラシーなどの認知的基盤、②身体面や精神面での健康やウェルビーイングなどの身体・心理的基盤、③道徳や倫理面を含む社会・情動的基盤を挙げています。

なお、近年重要性が指摘されている、金融リテラシーやグローバル・コンピテンシー、メディア・リテラシー、データ・リテラシーといった新しい種類のコンピテンシーにしても、これらの発達の基盤のうえに形成されるものであることは、伝統的なコンピテンシーと同様であると白井氏は言うのです。

人間固有の力” への5件のコメント

  1. 「3つの変革をもたらすコンピテンシーについて見てきましたが、これらに共通するのが、とりわけAIが普及する時代において、いずれのコンピテンシーも、人間にとって固有の力であるということです」とありました。なるほど、それらの力は人間固有の力であるということになるのですね。だからこそ、これからの時代に向けてさらに意識して育んでいかなければいけないというのは納得ですね。これからの時代を考えた時に、やはり重要になってくるのは人にしかできない能力であるということが認識されると、確実に教育も変わっていきますね。「また、そもそも、心身の健康がなければ十分に学習することも、力を発揮することも難しいだろうと言います」というのもまさにですね。保育においてもまず保育者との信頼関係であったり、健康、安全をしっかり守るという当然のことがあって成り立つものだと思います。

  2. 人工知能の発展に伴って、人類VS人工知能の構図が様々なところで出来上がっている印象を受けます。争いよりも、適材適所・互いを生かし合う・得意分野を活かすといった活用法をうまく見出せないと、それを拒む業種が益々衰退していってしまう気がします。「これからの教育には、これまで以上にこうした人間固有のコンピテンシーの育成に注力していくことが求められる」というように、人工知能の存在によって露呈された人間特有の能力を、より強固にしていく教育プログラムを構成することにより、更なる科学技術の発展やこれまでにないイノベーションを起こす機会にもなり得るということですね。「新たな価値を創造する」「対立やジレンマに対処」「責任ある行動をとる」というコンピテンシーは、人間だからこそ生かされる分野であることを再確認できました。

  3. 今回のブログの後半部分で紹介されている「3つの重要な基盤」は本当に重要だと考えます。俗に、読み書きそろばん、と言います。言語リテラシーや数的リテラシー、と言ってもいいでしょう。やはり、AIの時代になっても、これらのリテラシーは必要です。どの程度必要かは、その人の必要性に応じるでしょう。そして、社会の意識化、その意識を支える、社会情動性。私たちは一人では生きられない、という当たり前の事実。この事実の認識が殊の外求められてくると考えられます。そして、これはもう言うまでもありません。心身共に健康であることです。ウェルビーイング。心身が健康であれば、その人のウェルビーイングは保たれていると言えるでしょう。健全な魂、を宿すことを意識して生きることがこれからの社会に必要な気がします。

  4. 「いずれのコンピテンシーも、人間にとって固有の力である」とあります。特にAIの時代になれば、機械ができることは機械がしますし、そうでない文脈で考えた時に人間しかできないことがよりクローズアップされるだろうということは予想できます。では、その中で人間固有の力とはどういったものかというのが今回のコンピテンシーであったということは理解できますし、もう一度整理して考えていかなければいけないと感じています。また、今回のコンピテンシーにおいてとても重要になっているキーワードが「社会」であったように思います。それは自分自身の力というわけではなく、そこには必ず、自分ではない他者「たち」があるということを考えなければいけません。それぞれがそれぞれに「人びとの幸せ」を考えるということが「社会全体のウェルビーイング」につながるということが根底にあり、そのための「自分」という意識というのはAIにはできないことかもしれません。そう考えると、教育や保育現場の役割は社会を意識させることに大きな意味があるように思います。

  5. AIにとってかわられるものは、本当に必要のない時代がくることが想像されます。昨夜は息子の割り算のひっさんの宿題に携わりましたが、電卓なら一瞬なものを、その過程の式が重要とのことで、丁寧に書いていました。近い未来に笑われてしまうかもわからないことを、とても一生懸命に取り組まさせられる現行教育です。

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