コンストラクトの整理

コンストラクトの整理については、 Education2030プロジェクトにおける議論においても、当初は、各ドメインごとにコンストラクトを整理することも考えられていたそうです。すなわち、知識、スキル(認知的スキル、社会・情動的スキル、身体・実用的スキル)、態度及び価値観という3つのドメインに沿って、各コンストラクトが、どのドメインに属するのかについて分類することも検討されたそうなのです。

たしかに、例えば、批判的思考力や間題解決能力といったものであれば、認知的スキルに含まれるものと考えられるなど、コンストラクトの分類が概ね確定していると言えるケースもあると言います。しかしながら、例えば、共感性になると、その定義とか分類方法の違いによって、どのドメインに整理されるか異なってくる場合があると言います。

共感性になると、その定義とか分類方法の違いによって、どのドメインに整理されるか異なってくる場合があります。一例として、欧州評議会の定義によると、「共感性」とは、他者の認識や考え、信念などを理解・想像するという点では認知的スキルですが、一方では、他者の気持ちや感情、ニーズなどを理解・想像するという情動的スキルでもありますし、さらには、他者の状況についての認知的・情動的な理解に基づく同情や懸念なども含むものとされているそうです。」さらに、研究者による文献では、「共感性」を態度の一つとして提えている場合もあるなど、その整理についての考え方も非常に多様です。

この例のように、各コンストラクトが、必ずしも特定のドメインのみに帰属するものではなく、多面的性格をもつものがあることから、それぞれを、特定のドメインのみに属するものとして整理することが必ずしも適当でないという結論に至り、先述の表のように列挙して提示されることとなったのだそうです。

さて、上記のコンストラクトの検討において、その基準の一つとされたのが、2030年の未来との関連性(relevance for 2030 )であり、具体的には、それぞれのコンストラクトがエージェンシーや変革をもたらすコンピテンシーの育成にどのようにつながるのか、といったことが検討のポイントとなります。エージェンシーにしても、変革をもたらすコンピテンシーにしても、具体的なコンストラクトとしては様々なものを含み得ますが、ここでは、これらの概念に関するコンストラクトの代表例を白井氏は紹介しています。なお、ここで挙げているのは、あくまでも代表例であり、それぞれのコンピテンシーの包括的なリストとして示すものではないと断っています。

まず、「エージェンシー」のコンストラクトに関するコンセプト・ノートの記述ではこう書かれています。「生徒のエージェンシーは、アイデンティティや帰属意識の発達に関わるものである。エージェンシーを発達させるに際して、生徒がウェルビーイングを目指して行動していくうえでは、モティベーションや希望、自己効力感や成長志向の考え方が重要になる。これによって、社会で活躍していくための指針となる目的意識をもって行動することができるようになるのである。」代表的なコンストラクトとして、「アイデンティティ」「帰属意識」「モティベーション」「希望」「自己効力感」「成長志向の考え方」です。