知・徳・体

韓国においても、伝統的に日本と同様に「知・徳・体」が重視されてきましたが、 2015年に改訂されたカリキュラムにおいても、各教科において育成を目指すコンピテンシーに加えて、コミュニケーションや芸術的感性などを含む一般的コンピテンシーが設定されています。また、とりわけ近年では、「徳」と「体」の重要性を強調して、全人的な発達に力を入れようとしています。「徳」については、 2015年に採択された人格教育振興法において、他者と上手にコミュニケーションがとれて、強さ、美徳、知性のバランスがとれた知的な学習者の育成を目指すこととされているそうです。「体」についても、学校でのスポーツや運動を強化することで、心身のバランスのとれた成長を促そうとしているのです。

「知・徳・体」を重視するのは、決してアジアだけに見られるものでもありません。コンセプト・ノートにおいては、ドイツにおける“Bildung”という概念が紹介されています。この言葉は、日本語では一般に「教養」や「陶冶」と訳されています。Bildungについては、「ドイツにおけるBildung概念は、古代ギリシャの伝統に由来するものであるが、知識と個人的な成長を組み合わせるために構築されたものである。Bildungの概念は、学校教育の目的に変化していったが、それもエリートのためだけでなく、全ての生徒を対象にしたものであり、1960年代以降、北欧諸国において復活している」と言っていますが、Bildungの特徴は、知識やスキルの獲得は、その前提条件に過ぎず、それ以上の価値が含まれているということにあります。すなわち、Bildungは、それぞれの文化において熟成されてきた価値観を含むものであり、知識やスキルを身につけるだけでは、Bildungを獲得したとは言えないという意味では、コンピテンシーの統合的な理解に通じるものであると言えます。

このように、東洋と西洋のいずれにおいても、知識、スキル、態度及び価値観に相当する要素を見出すことができるのであるす。これらの要素相互の関係性については、白井氏が既に述べてきたとおり、コンピテンシーを発揮していくうえで不可欠ですが、さらに、今後ますます重要になってくると考えられると言います。なぜならば、これからの社会は、学校や職場、コミュニティを含めて、倫理や文化、言語など様々な面でより多様化が進むと考えられますが、そうした社会に参画し、そこで活躍していくためには、もちろん、異文化に関する知識や外国の言語などの認知的スキルももちろん大切ですが、さらに、相手の視点に立って考えたり、共感したりするといった社会・情動的スキルや態度及び価値観が、これまで以上に重要になってくると考えられるのです。

AIが発達し、より広く普及していく時代においては。態度及び価値観の重要性がこれまで以上にクローズアップされることになります。すなわら、態度や価値観に関する側面は、今のAIでは十分対応ができない人間固有の知性であり、その分、人間が力を発揮していかなければならない領域ということになると言います。

最初に触れたフレイらの分析にあるように、AIによって代替される可能性が低い職種の特徴が、他者との関係性が求められるということです。具体的には、説得や交渉など、複雑な関係性を読み解いたうえで、柔軟に対応していくことが求められる職であるというのです。こうしたしごとをしていくためには、単に知識やスキルがあるだけでなく態度及び価観を必要とします。