模倣学習

実用的スキルについて特徴的なのは、これらの多くが、「模倣学習」と呼ばれるような、模倣や観察、繰り返しなどによって身につけられることだと言います。こうしたスキルは、いったん身につけてしまうと、必ずしも意識をして行うということがなくなってきます。これは全く無意識的に行っているということではなく、ーつーつの動作が一連の連続した動作となることで、意識する必要がなくなるということによります。例えば、通常歩いたり走ったりする際には、膝やかかとの動きなどを意識することはありませんが、氷の上であるとか、凸凹した荒れた地面の場合であれば、ーつーつの動作を自然と意識していることは、実際の経験上からもわかることだろうというのです。

こうしたスキルの中には、家庭などの環境において自然に身につくものも多いと考えられますが、そうなると、教育の場面においては、実用的スキルについてどのように考えるかが重要になってきます。この点、コンセプト、ノートでは、「実用的スキルに対する特別な必要性や特定の教育目的を担保すること、また、そのために教育的に介人していく必要性は、状況によって変わってくる」とされています。例えば、文字を書くということについても、アルファベットの場合には、若干の表記の違いがあっても、誤解やスペリングのミス程度と理解されて済むかもしれませんが、日本を含むアジアの諸国の場合には、漢字やひらがな、カタカナ、ハングル文字などについては、それらを書くこと自体に一定のスキルが必要とされ、不誠実な記述は、アルファベットのミスの場合とは違う意味をもつ場合があるというのです。

ここで、少し私は違和感を覚える部分があります。この実用的スキルの特徴が、「模倣学習」と呼ばれるような、模倣や観察にあるとすれば、当然、模倣するためには、その地相が必要ですし、観察による学習もその対象がなければなりません。ですから、これらのスキルが「家庭などの環境において自然に身につくものも多いと考えられますが、」ということは、最近の少子化の進んでいる地域では、困難になってきている気がします。ですから、このスキルを身につけるための教育について、大人からの介入には慎重になるべきだと思います。実用的スキルの多くは、子ども集団の中で生活する中から、お互いに刺激し合って、身につけていく部分が多い気がするのです。

OECDでは、さらに「心身の健康の重要性」を訴えています。前述したように、自殺や肥満などが社会的な問題になっている中で、生徒の健康や心身のウェルピーイングを確保していくことは、世界的に重要な課題です。健康的な習慣や健康に関する知識を身につけるためには、そのための教育を行っていくことが必要だと言います。多くの先行研究によると、若い頃に身につけた習慣は、大人になっても変わらないことを示していることから、早い段階で健康に関する習慣を形成することが重要になるというのです。また、これまでの研究の蓄積により、運動が生徒の心身の健康や認知、学力にもたらす効果が明らかになってきています。例えば、幼児期の基本的な運動スキルの発達や運動協調性、運動や運動能力といったものが、その後の認知作用や学力に影響するといった研究成果も出されているそうです。