手続的知識

デザイン思考やシステム思考などの手続的知識は、先述のように、一定の手順を含んでいたり、問題の特定や解決につながるような思考パターンを重視しています。こうした思考パターンについての知識を獲得することで、生徒は、自らが目標に向けて進んでいくことができるのだというのです。

これらの手続的知識は、例えば科学や数学といた特定の教科においても適用することができるのはもちろんですが、特定の教科を越えて、より一般的な思考の枠組みとしても用いることができるものだと言います。すなわち、様々な文脈や状況において、問題解決のための方法を見つけるために活用することができる知識ということであり、ラーニング・コンパスでは、こうした転移可能性の高い手続的知識が重視されているのです。

教育の場面において、デザイン思考やシステム思考などの手続的知識を学ぶ意味は、「物事の仕組みが、目的のためにどのように組織化されているのか、また、もし目的達成につながっていないのであれば、どのように仕組みを維持することが難しいのかを理解する」ことにあると言います。こうした手続的知識を身につけることによって、教科の知識なども活用しながら、例えば、現実の社会において、うまく機能していない仕組みについても認識・理解し、改善に向けて取り組んでいくことができるようになると考えられています。

では、2030年には、どのようなスキルが求められているのでしょうか?これを考えるうえで、まず、スキルの類型を整理しています。スキルというと、日本語では「技能」と訳されることが一般的です。実際2017年・2018年に改訂された学習指導要領においても、「知識及び技能」という形で「技能」の用語が用いられていますが、ラーニング・コンパスにおけるスキルはそれよりも広い内容をもち、伝統的な認知的スキルはもちろんのこと、メタ認知スキル、ソフトスキル、あるいは非認知スキルなどと呼ばれるような様々なスキルも含む概念として検討されてきたそうです。様々なスキルのうち、伝統的に重視されてきたのが認知的スキルであり、知識と合わせて狭義の学力と同義に捉えられることもあります。一方、「21世紀型スキル」の動きが盛んになる中で改めて脚光を浴びたのが、ソフトスキルや非認知スキルと呼ばれる力であり、そうした多様なスキルを、どのように分類・整理していくのかが課題となっていたそうです。

プロジェクトにおける議論を通して整理された定義では、スキルとは「プロセスを実行したり、目標を達成するために自らの知識を責任ある形で活用することができる能力」とされています。キー・コンピテンシーの考え方について触れたように、スキルは、知識や態度・価値観とともに、複雑なニーズに応えていくために“mobilise”(結集)されるものであり、統合的なアプローチに立脚するコンピテンシーの概念の一部として位置づけられると言います。同時に「知識、スキル、態度及び価値観は競合し合うコンピテンシーではなく、むしろ、相互にかかわり合いながら育成されていくもの」でもあると言います。具体的には、例えば、知識を獲得するためには一定の認知的スキルが必要であるのは当然であるし、知識が増えることで認知的スキルも発揮しやすくなるのです。さらに、態度及び価値観も、知識やスキルを獲得したり、使いこなしていくうえで不可欠です。というのも、「態度及び価値観は、知識やスキルを獲得するためのモティベーションとなるし、また、そもそも目指すべきウェルビーイングがどういうものであるかとか、優れた人間性やシチズンシップがどういうものか、といった概念を考えていくうえで不可欠だから」だというのです。