見方・考え方

「見方・考え方」は英語に訳すとしたらどのような訳が適切だろうかと白井氏は言います。シンプルな訳としては、“ways of seeing and viewing”とすることが考えられるというのですが、これでは教科の本質に迫ろうとするニュアンスが十分に伝わらないだろうとも言います。そこで、専門家とも相談しながら考えたのが、“discipline-based epistemological  approach”(「各教科の学問原理〔ディシプリン〕に基づいたエピステミックなアプローチ」)という英語表現であり、文部科学省においては、こちらを「見方・考え方」の英訳として用いることにしているそうです。

学習指導要領( 2017年・2018年改訂)の整理としては「見方・考え方」は資質・能力としては位置づけられていませんが、Education2030プロジェクトにおいて、「エピステミックな知識」が「知識」として整理されているように、今後のカリキュラムを考えていくうえでは、こうした整理の在り方についても柔軟に見直していくことも考えられると言います。

よりVUCAとなる世界においては、実生活上の課題を特定したり、解決していくための思考パターンを、新しい状況に対してどのように適用していくかということが重要になってくると言います。もちろん、そうした思考パターンは、各教科においても学んでいくことになりますが、ラーニング・コンパスにおいては、それらは「エピステミックな知識」として位置づけられており、ここでいう手続的知識は、各教科に共通するものとして整理されています。

もちろん、思考パターンにも様々なものが考えられるでしょうし、新しいものも次々に開発されています。ラーニング・コンパスの忰組みにおいて、何か特定のものだけを手続的知識として限定的に示そうとするものではありませんし、そうすることに意味もないだろうと白井氏は言います。コンセプト・ノートにおいては、思考パターンの例として、近年注目されているデザイン思考やシステム思考について例示されているそうですが、あくまでも代表的なものであって、これらに限る趣旨でないことには改めて留意したいというのです。

そこで、まず白井氏は、デザイン思考を例にとって考えてみています。デザイン思考はシステム思考に類似する考え方で、特に、具体的な課題解決を重視する思考パターンの一つです。デザイン思考の権威とされるスタンフォード大学教授のゴールドマンによれば、デザイン思考とは「新しい解法によって問題を解決していくことを支援する手続、スキルセット、あるいは心構え」であると言っています。デザイン思考は、もともと商品開発などを行う企業において、商品の企画やデザインなどが、ユーザーから最も遠い位置にある研究所などで行われており、結果的にユーザーの声を直接聞かないまま、商品開発が行われてしまっていることを問題視し、解決策を提供しようとするものだそうです。ゴールドマンは、この間題を解決するためのデザイン思考の手順として、①共感の形成(ユーザーに対す理解を深める)、②問題の特定(課題が何かを定義する)、③プレインストーミング(解決策を考える) 、④プロトタイプの作成 (考えながらプロトタイプを作る) 、⑤テストとフィードバック(ユーザーにプロトタイプを試してもらい、フィードバックを得る) 、という5つの手続を提案しています。その際、利害関係者を巻き込んでいくことで、より適切で持続可能な解決策につながると考えられるというのです。