エピステミック

「エピステミック」とは、辞書による一般的な定義によれば「認識論的な」と訳される哲学用語です。Education2030で用いられている「エピステミック」は、哲学的な意味ではなく、各教科の学問原理をどう捉えるのかという視点や考え方、手続に関する知識であるとされています。コンセプト・ノートにおいては、「各学問分野の専門的知見を有する実践家が、どのように仕事をしたり、思考したりするのかということについての理解」とされており、エピステミックな知識を獲得することで、生徒は学習の目的を見つけることができるようになったり、学習したことを適用することについて理解したり、教科の知識を深めることができるとされています。

各教科には、それぞれの学問分野に固有の考え方や原理・原則(ディシプリン)があります。例えば、地球温暖化問題ひとつをとっても、生物学や歴史学、数学では、問題に対するアプローチの仕方が全く異なるというのです。コンセプト・ノートにおける説明では、このエピステミックな知識を、“Think like a historian”(歴史学者的に考える)とか、”Think like a mathematician” (数学者的に考える)といった表現で簡潔に説明しています。

なお、Education2030の議論よりも少し前の段階になりますが、OECDが行っているPISA2015の科学的リテラシーに関して、エピステミックな知識が、知識の一類型として定義されています。PlSA2015における「手続的知識」や「エピステミックな知識」などの定義は、ラーニング・コンパスにおける知識の類型の整理と重なる部分があることから、白井氏は、参考までに紹介しています。

PISA2015の科学分野における知識は、①コンテンツの知識、②手続的知識、③エピステミックな知識、の3つに分類されています。「①コンテンツの知識」は、科学に関する事実や概念、アイディアや理論といった伝統的な知識の類型です。「②手続的知識」は、科学において用いられてきた科学的探究の基盤となる実践や概念に関する知識とされており、例えば、誤差や不確定性を縮減するための測定の繰り返しとか、変数のコントロール、データの表現や伝え方に関する標準的な手続などが例として挙げられています。そして、「③エビステミックな知識」は、特定の構成概念の役割や科学の知識構築のプロセスに必要な決定的な特徴であるとされています。具体的には、質問や観察、理論や仮説、モデルや議論などの科学における機能についての理解であるとか、様々な科学的探究の方法についての認識とか、信頼できる知識を構築するうえでのピア・レビューの役割などであって、「科学的な知識がどのように形成されたのかとか、その性質や妥当性、信頼性に関する理解を含むもの」であるとされています。

ラーニング・コンパスの場合には、「手続的知識」を教科横断的なものとして整理しています。一方、 PISA2015で挙げられている「②手続的知識」は、科学に関する手続的な知識であることから、前者の定義には含まれないこととなります。すなわち、ラーニング・コンパスにおいては、教科に関する手続的知識は、「エピステミックな知識」として整理されているため、PISA2015で挙げられている科学分野における「②手続的知識」と「③エピステミックな知識」の両方が、ラーニング・コンパスにおける「エピステミックな知識」に相当するものになると考えられると言います。