発達のパターン

ところで、学習科学に閉する近年の研究によると、学習者それぞれで、発達のパターンは多様であり、何か特定の決まった発達の法則があるとか、通常のカリキュラムで定められているような順序で発達していくといったように、予測可能な形で伸びていくものではないといいます。それゆえ、それぞれの学習状況に応じて、例えば、同じ年齢の生徒であっても、一人一人が発するコンピテンシ一のレベルが様々なものになるのは当然であるというのです。一方で確実に言えるのは、学習者が幼少期から思春期、そして大人へと成長するに伴って、知的に成熟していくということです。その過程では、周囲の人間関係や文化的価値観などが作用します。そのため、「発達の過程は極めて多様であるが、その多様性というのはランダムでもなければ絶対的なものでもない。発達の連続性に関するステップの数や順番は、それまでの学習履歴や文化的背景、コンテンツの内容、文脈、一緒に学習に参加する者、情動の状態などによって変わってくる」といいます。

また、知識やスキルを身につけていくことが大事だとしても、様々な状況において、必ずしも円滑に身につけられるわけではありません。いったん身につけたと思ったスキルであっても、与えられたタスクの焦点が変わったり、タスクの文脈が変わったことによって、そうしたスキルが発揮できない場合もあり得るだろうと言います。そうした中で、改めて重要になるのが、様々な種類の知識をつなぎ合わせたり、統合的に考えることができるようにしていくことだというのです。知識をより深く理解したり、より高いレベルのスキルを身につけていくためには、認知的な側面だけでなく、態度や情動などを含めて、お互いに補強し合うようにしていくことが重要です。様々な状況や環境に対して、知識をどのように適用していくのかを試行錯誤していく中で、教科の知識、教科横断的な知識、エピステミックな知識、手続的知識の相互作用が生じるのであり、そうした機会を繰り返すことで、より深い知識やスキルが身についていくのだというのです。

白井氏は、以下、順を追って、ラーニング・コンパスで分類した知識の類型ごとに、それぞれ検討しています。はじめに、「教科の知識」は、「教科に固有の概念や詳細なコンテンツを含むもの」と定義されており、例えば、数学や国語などの教科の学習を通じて獲得する知識です。「教科の知識」がなぜ重要なのかと言えは、「教科の知識」を学んでいく過程で、知識をより深く理解したり、より専門的な知識を獲得するうえで必要となる考え方の基盤を築くことができるからだというのです。すなわち、「教科の知識」を身につけることで、生徒は、より専門的な知識を獲得したり、新しい知識を創造したりすることができるようになるのだというのです。別の言い方をすれば、「教科の知識」が重要なのは、それらが、新しい知識が生み出されるための原材料としての役割をもつからであり、「教科の知識」は、「教科横断的な知識」、「エピステミックな知識」、「手続的知識」という他の3つの知識の類型の基盤になるものだからだというのです。例えば、生徒が様々な「教科の知識」を獲得することによって、異なる学問分野の知識同士を組み合わせることができますし、これを「教科横断的な知識」といいますが、また、その知識が、様々な場面で実際にどのように活用されているのかを学んだり、それを、「エピステミックな知識」というのですが、知識を活用するための様々なプロセスや方法について学ぶことができるのです。これは、「手続的知識」というのです。