重要なスキル

OECDが行っているPIAAC (国際成人力調査)では、職業人にとって必要と考えられる様々なスキルについての測定を行っていますが、リテラシーなどの認知的スキルやICTスキル、STEMに関するスキルなどに加えて、「学習に対する構え」についても測定しているそうです。PIAACにおける「学習に対する構え」とは、例えば、「新しいアイディアを実生活とどの程度関連づけているか」、「新しい物事に直面した時に既有知識をどの程度関連づけているか」、「難しい物事について、根本まで立ち返って考えているか」といった質問をまとめてインデックスにしたものですが、この「学習に対する構え」の指標が高い場合、認知的スキルの一つであるリテラシーのレベルにかかわらず、積極的な学習への参加が見られるようです。

伝統的に、教育の世界においては認知的スキルが重視されてきましたし、実際リテラシーやニューメラシーなどの認知的スキルは、労働生産性などとの強い関連性も見られるそうです。一方では、こうした「学習に対する構え」など、メタ認知や学習方略に関することは、認知的スキルと並んで、新しい知識を共有したり、蓄積していくうえで必要であるとして、ビジネスの世界においても重視されようになってきているそうです。例えば、ピジネスの国際化が進む中で、グローバル・バリュー・チェーンの構築に向けた国際的な統合を果たしていくうえでも、「学習に対する構え」が重要な役割を果たしているとして、企業活動においても評価されているそうです。

また、AIの時代を迎える中で、こうしたメタ認知に関するスキルは、より重要になってくると考えられています。というのも、AIは特定の分野や領域については圧倒的な知識を有しているとしても、例えば、文脈や主観に基づいた情報を理解することができませんし、また、不確実性があったり、曖味な状態においては、十分に対応することもできないからです。たしかに、 AIは特定のタスクを効率的に実行することはできますし、ある程度であれば、複雑さや不確実さに対応していくこともできると考えられます。しかしながら、例えば、目標や文脈が明確でないような場合には、アルゴリズムがうまく働かず、機能停止に陥ってしまいかねません。その意味では、たとえひとつひとつの判断が完璧なものではないにしても、VUCAな状況においては、AIよりも人間のほうが、より柔軟に対応していくことができると考えられるのです。

様々なデジタル技術が社会に浸透していく中で、デジタル技術やICTに関するスキルはますます重要になってくるだろうと言います。実際、EC (欧州委員会)によると、専門的なデジタル・スキルを有する人材に対する需要は、毎年4%の割合で増加しているといいます。

もっとも、だからといって、デジタル・スキルを身につければ全てが足りるということでもないのは当然であると言います。すなわち、新しいスキルもまた、急速に時代遅れなものとして、陳腐化してしまう傾向があるからです。例えば、ヨーロッパ・職業訓練開発センターの調査によると、フィンランド、ドイツ、ハンガリー、オランダにおいては、労働者の16 %が過去2年間で自分たちのスキルが陳腐化したと認識しているということであり、特にデジタルやICT関連のスキルは、陳腐化が早いとも指摘されています。

重要なスキル” への3件のコメント

  1. AIでは、ある程度の「複雑さや不確実さ」に対応することはできたとしても、変動性や曖昧さの面では人間に分があるということなのですね。AIを敵対する対象ではなく、得意なところを任せるニューパートナーであるといった思考は、今後重要になる印象です。そして、衝撃だったのが「新しいスキルもまた、急速に時代遅れなものとして、陳腐化してしまう傾向がある」という文です。この文から、時代の急速な流れを意識せざるを得ませんね。中でも、「特にデジタルやICT関連のスキルは、陳腐化が早い」ということでした。園でもICT化を取り入れましたが、1年もたたないうちにその会社から新しいサービスがどんどん展開されています。そのような、新しい価値を創造し続けて行かなければ生き残れない社会なのでしょう。それに比べると、保育業界はのほほんとしています。そういった特徴の良さを把握しながらも、保育観はアップデートしなくてはいけませんね。

  2. 「その意味では、たとえひとつひとつの判断が完璧なものではないにしても、VUCAな状況においては、AIよりも人間のほうが、より柔軟に対応していくことができると考えられるのです」とありました。人との関係の中で行動し、判断するというのは時に全く論理的ではない行動であってもその関係性の中では適切な判断だったりするということがありますが、まさにこのあたりはなかなかAIには理解できない部分かもしれませんね。同じ人間であっても難しい時がありますから。しかし、そんな絶妙な関係性が人の中で生きていくためにはまた重要だったりするのかもしれません。「新しいスキルもまた、急速に時代遅れなものとして、陳腐化してしまう傾向があるからです」とありました。このことは常に意識して、日々自らの固定概念に縛られないということはやっていきたいものです。

  3. 2045年問題、シンギュラリティ、ということを想起しました。認知能力においてはAIにとって代わられるでしょう。それが2045年なのか、あるいは2030年なのかわかりませんが、今日の技術革新を観るにつけ、今とは異なる世界が現出するだろう予測が立ちます。それでも「VUCAな状況においては、AIよりも人間のほうが、より柔軟に対応していくことができる」だろうという見解はありがたい。所詮、AIは人間が生み出した人口物なのです。生み出されたモノという限界をAIはもっているのですね。それよりも人間の柔軟性です。これこそが人間の特徴です。柔軟な、を意味する英語は、フレキシブル、です。フレキシブルゾーンがある園は、この人間の柔軟性を意識している優れた園です。自画自賛ですが、何と言われても、そうなのです。あなたの園にフレキシブルゾーンはありますか。

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