スキルの更新

デジタルやICT関連のスキルは、陳腐化が早いとなると、より重要になってくるのが、個別の新しいスキルを獲得するということよりも、新しいスキルを継続的に獲得し、自らのスキルを常に更新していく力ということになります。Berger & Freyは、「融合的スキル」を身につけさせるようにしていくべきであると指摘しています。ここでいう「融合的スキル」とは、「創造性やアントレプレナーシップ(起業家精神) 、技術的なスキルの組み合わせであって、新たに登場してくる新しい職業へのシフトを可能にするスキル」であって、これから注目される職種の例として、テレピゲームのデザイナーなどが挙げられています。例えば、テレビゲームのデザイナーの仕事をこなしていくうえでは、ゲームの中核となる特徴についてデザインすることはもちろん、ゲームのメカニックから物語の作成、登場人物のキャラクター設定、デザインに関する文書の作成や管理、プロダクション・スタッフに指示したり、共同作業しながら、デザインされたとおりにゲームを作成していく、といった様々なタスクが求められるのです。こうしたタスクを実行していくためには、例えば、デザインやメディア・コミュニケーション、心理学などに関する知識、プログラミングや批判的思考力、複雑な問題を解決する能力などのスキル、知的好奇心や遊び心、情熱などの態度及び価値観といった、まさに複雑で融合的な能力が求められることになるというのです。

次に、第二のカテゴリーが社会・情動的スキルです。社会・情動的スキルは、「非認知スキル、ソフトスキル、性格スキルなどとしても知られ、目標の達成、他者との協働、感情のコントロールなどに関するスキル」です。

社会的スキルと情動的スキルは、以前は別個のものとして捉えられていましたが、概ね1980年代から1990年代にかけて、両者を関連づけて捉えられるようになりました。情動と認知の統合の考え方については、既にピアジェが打ち出していましが、ガードナーが、伝統的に重視されてきた言語や論理数学に関する知能だけでなく、音楽や身体運動、対人関係などに関する様々な知能の重要性を指摘する「多重知能」の考え方を提唱してからは、個人内スキルと対人関係スキルの両面がより統合的に捉えられるようになってきました。私は、これを「心内知性」と「対人知性」という説明をしています。さらに、ゴールマンは、1990年代に入ってから注目を集めるようになった「情動的知能」という概念を打ち出していますが、ここでも、自己意識、自己調整、モティべーション、共感性、社会的スキルという5つの要素が挙げられており、情動的スキルと社会的スキルが統合的に扱われています。この「情動的知能」というのは、「Emotional intelligence」という、日本では、EQ力と言われて広まった「心の知能指数」です。白井氏は、ここでは、「情動的知能」と訳しています。こうした動向も踏まえ、 Education2030プロジェクトにおいては、社会的スキルと情動的スキルを統合的に捉えることとしたのだそうです。

さて、この社会・情動的スキルについても、これからの時代において、より重要になってくると白井氏は考えています。前述のBerger&Freyによると、AIに代替されることが困難な仕事として、複雑な社会的関係性が必要となる仕事が挙げられており、とりわけ社会・情動的スキルを身につけることの重要性が強調されています。

スキルの更新” への4件のコメント

  1. ゲームデザイナーに必要な多岐に渡る能力「融合的スキル」があげられていましたが、とてもイメージしやすかったです。ゲームデザインのみならず、「ゲームのメカニックから物語の作成、登場人物のキャラクター設定、デザインに関する文書の作成や管理、プロダクション・スタッフに指示したり、共同作業しながら、デザインされたとおりにゲームを作成」といった様々な能力をこなせる人物でなければいけません。物語構成には創造力だけでなく人が熱中没頭するためのストーリー性が重要ですし、それは人の心を理解しておかなければできませんね。また、企画チーム内でのコミュニケーションスキルも重要でしょう。そして、「プログラミングや批判的思考力、複雑な問題を解決する能力などのスキル、知的好奇心や遊び心、情熱などの態度及び価値観といった、まさに複雑で融合的な能力が求められることになる」というように、これまで注目されてきたスキルの総集編のような総合力を兼ね備えなければならないということを感じました。

  2. 「デザインやメディア・コミュニケーション、心理学などに関する知識、プログラミングや批判的思考力、複雑な問題を解決する能力などのスキル、知的好奇心や遊び心、情熱などの態度及び価値観といった、まさに複雑で融合的な能力が求められることになるというのです」とありました。好きな仕事をするということでも様々な力が必要になるということを感じます。保育士だって子どもを見るだけが仕事ではなく、職員同士の関係であったり、保護者とのやりとりなどなどその仕事内容は多岐にわたりますね。好きな仕事をするためには嫌いなこともしなければいけないということを養老先生は言っていました。これはそのままで受け取るのではなく、嫌いなことも好きになるということですし、藤森先生が言われる幼児期にいかに様々なことに意欲を持つ子どもを育てるか、自ら能動的に行動できる子ども育てていくかということにつながっていくように思います。

  3. AIの開発によって認知領域がカバーされていくとなると、「社会・情動的スキルを身につけることの重要性」がクローズアップされていくことがよくわかります。認知領域に関しては今後ますますAIに拠らなければならないでしょう。「社会・情動的スキル」分野においては、これまで以上に、個と集団との相互作用、ということがますます問題視されることでしょう。AIが独裁者となって指令を発したとします。その指令を成し遂げるのはおそらく人間集団ということでしょう。そして、人間が奴隷化されるように見えながら、やはり親は親。AIは人類によって適切に管理されていくことでしょう。こうした未来予想図を考えることは楽しいですね。その答えがやがて出るにしても、違う見解を出し合って、議論するのは何かを生み出す苦しみを伴いますが、やはりしなければならない、人間にとって重要な行為でしょう。トップダウン横行の現在、ダウンされる内容の読解力をしっかりと身に付けられるよう、子どもたちの環境を設定していかなければなりませんね。

  4. 文明というものが進んでいくなかで、かえって今必要とされるものが、文明や進化におけるものではなく、むしろ、より「人間らしい」ところであり、「人間の根源的な能力」であるというのは面白いですね。人の進化においても、ゲームチェンジャーとなるべき人物であったり、出来事であったりすることが人の暮らしをよくしていきました。しかし、よくなっていく過程において、それをコミュニケーションによって伝えたり、発展させて日々の中で進化を進めていきます。いくら知識があっても、それを社会・情動的スキルがなければ、伝えることや協力して発展させることもできないという事を考えると、人はひとりでは何もできず、人と関わる中で様々な未来が見えてくるのだと思います。これらのことにおいて、保育や教育とはどういった意味や意図をはらんでいるのでしょうか。しっかりと未来を見据えて地に足をつけて関わっていかなければいけませんね。

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