実現したい未来

「私たちが実現したい未来」は、一人一人が描き、その実現に向けて取り組むべきものですが、「社会的なウェルビーイングの概念は、時間の経過とともに、単なる経済的、物質的な繁栄といった以上のものを含むように変わって」きており、いわば普遍的な価値を帯びるようになっています。そうした変化を踏まえて、コンセプト・ノートにおいても、「私たちが実現したい未来について、「多くの異なった見解があるとしても、社会としてのウェルビーイングは共有すべきゴールである」としているように、ウェルビーイングは、人それぞれによって異なり得る「私たちが実現したい未来」を考えるうえでの、大きな方向性を示す枠組みとして理解されていると言います。

なお、 2015年に、国際連合は持続可能な開発目標(SDGs、Sustainable Development Goals for 2030 )として17の目標を定めています。SDGsとOECDのウェルビーイング指標を対照して整理してみると、それぞれで示されている理念が重なりあっていることがわかり、ここからも、ウェルビーイングの指標の普遍的な性格が裏づけられるだろうと白井氏は言います。なお、 Education2030プロジェクトには、国連の組織としては、ユネスコがパートナー機関として参画しているそうです。

それでは、ラーニング・コンパスの策定に至る議論の経過はどうでしょうか。

プロジェクト開始の初期段階から各国間での合意が成立していたのは、コンピテンシーを考えていく際に、伝統的に重視されてきた知識や認知的スキルなどに限らず、2030年におけるウェルビーイングの達成につながるような、より広い意味でのコンピテンシーの内実を明らかにしていくということだったそうです。以前に述べていた、「21世紀型スキル」として総称される様々なコンピテンシーに関する提案については、ターミノロジー(用語の使い方)やタキソノミー(分類法)の混乱から、同じ内容であっても用いられる言葉が違ったり、あるいはその反対に、同じ言葉でも示そうとする内容が違う、といった状況が見られました。そこで、Education2030プロジェクトが最初に着手したのが、様々なコンピテンシーの要素を収集したうえで、それらを分解して、いったん風呂敷の上に広げることでした。

ブルーム・タキソノミーにおける認知面、精神運動面、情意面という分類を踏まえると、教育プログラムの一般的な要素として考えられるのは、知識、スキル、態度に相当するの3つの要素ということになります。Education2030プロジェクトにおける議論も、これを一つの理論的な出発点としたそうですが、プロジェクトの開始当初、議論の参考となる「たたき台」が必要ということで、暫定的にいくつかの素材が検討に用いられようです。例えば、第一回のIWGで用いられた資料には、「21世紀型のコンピテンシーの多様な側面」のモデルが示されています。このモデル自体は簡単なものですが、 21世紀型コンピテンシーに概ね共通する要素が含まれていると言います。すなわち、x軸、y軸に示されている知識やスキルだけでなく、z軸方向に態度が盛り込まれていること、また、近年重視されているメタ認知が全体を通底する概念として示されていることです。