ミッション

現在のOECDのミッションは、単に「経済的成長」を目指してGDPなどの経済指標を高めることだけではなく、究極的に人々が心身共に幸せな状態(ウェルビーイング)を作り出すことです。そこでは、個人レベルでの11の指標として、「健康状態、ワークライフバランス、教育とスキル、社会とのつながり、市民参加とガバナンス、環境の質、個人の安全、主観的幸福、所得と財産、仕事と報酬、住居」が示されています。これらの個人レベルでのウェルビーイングが、経済資本、人的資本、社会資本、自然資本として、社会レベルでのウェルビーイングに貢献するとともに、そのことがまた個々人に還元されるという循環関係にあるとしているのです。

個人レベルのウェルビーイングと社会レベルのウェルビーイングの往還関係の背景にあるのが、人間自身も大きな生態系(エコシステム)の一つと見なす考え方です。「包括的成長」は、「経済的成長」だけでは捉えることのできないのです。貧困層などを含めた社会全体としての成長を含意するものとして捉えていますが、この概念をさらに広げると人間だけでなく生物全体についてのウェルビーイングを考えることになると言うのです。例えば、現在、急速な勢いで生物多様性が減少していますが、そうした変化は、将来的には、私たちの生活にも直接的な影響を与える可能性があると言うのです。すなわち、ウェルビーイングについて考える際にも、単に人間のウェルビーイングだけを考えるのではなく、人間もより大きなエコシステムの一部であるという前提のうえで考えることが求められるのであり、より大局的な視点が必要になってくると言うのです。

このOECDによるウェルビーイングの枠組みで示されている11の指標については、一般に考えてどのような状況や立場にある人にとっても、一定の重要性をもつ、普遍的な性格をもつものとして整理されています。しかしながら、ウェルビーイングの内実として、より具体的にどのようなことを考えるかについては、当然、個々人での違いがあるだろうと言います。例えば「教育」という指標についても、どのような内容、どのようなレベルの教育を求めるかについては、多様な考え方や価値観があることが想定されます。

Education2030プロジェクトにおいては、望ましい未来の在り方について「私たちが実現したい未来」として議論を行ってきたそうです。その背景にあるのは、従来のコンピテンシーに関する議論が、ややもすれば受け身の議論に陥りがちだったことがあったそうです。すなわち、コンピテンシーに関する議論が、もともと職業上の人材論や組織論から始まったこともあり、これまでのコンピテンシーに関する議論の焦点は、例えば、「ICTの普及など時代の急速な変化に対応して、子どもたちにどのような力をつけていくか」といった、いわば雇用可能性や生産性の向上という視点が中心になっていた面があったと言います。別の言い方をすれば、社会経済の在り方を前提としたうえで、そうした社会経済の在り方に対応していくためにどのような力をつけていくことが求められるかが検討の中心でした。しかしながら、そうした形での教育の在り方についての検討は、社会・経済の在り方に、教育がどう対応していくかという、いわば「受け身」の議論だというのです。より重要なことは、変わりゆく社会にどう対応していくかという受動的な姿勢ではなく、どのような社会を作り上げていくかという能動的な姿勢です。それが、「私たちが実現したい未来」が含意するところでありますし、エージェンシーの理念にもつながるのです。