具体的な取り組みへ

世界では、「ニュー・ノーマル」に向けた動きが見られつつあるようです。もちろん、全てがこれらの方向性に向かっているということではありませんし、「ニュー・ノーマル」の方向性が絶対的に正しいということでもありません。また、それぞれの国や地域における文脈によって正しい判断自体が変わってくる場合もあるでしょう。重要なのは、伝統的な教育の在り方についてこうした「ニュー・ノーマル」の動きも踏まえながら客観的に検討し、良いものを採り入れながら、必要な見直しを行っていくことだというのです。こうした「ニュー・ノーマル」に向けた萌芽的な教育の動きについても、「ラーング・コンパス」など、 2030年の教育を考えていくうえで参考とされたのだそうです。この「ラーニング・コンパス」について次に説明していきます。

次に取り上げるのは、「Education2030プロジェクトの背景と議論の経過」についてです。2001年、OECD教育大臣会合においては、DeSeCoプロジェクトの成果に立脚しながら、「持続可能な開発と社会的連帯は、全ての人々のコンピテンシー ――すなわち知識やスキル、態度及び価値観を包摂すると理解されるもの―― にかかっている」として、コンピテンシーの認識に関する声明を出しています。ここでも言及されたコンピテンシーは、 DeSeCoプロジェクトの最終報告においてキー・コンピテンシーとして整理されることになりますが、このキー・コンピテンシーは、2030年においても適切なものであるとして、 Education2030プロジェクトでも認識されています。

一方では、様々な社会的な変化によって、コンピテンシーを身につけるための目標や焦点が変わっていくことは、十分想定されます。DeSeCoプロジェクトにおいては、「豊かで責任ある人生につなげ、現在や将来の課題に対応していくため」に、どのようなコンピテンシーが必要になるのかを議論してきました。また、学校での学習だけでなく、生涯学習の視点からもコンピテンシー育成の枠組みを示すことも期待されてきました。しかしながら、例えば、「豊かで責任ある人生」といっても抽象的ですし、また、生涯学習の視点まで加えるとすれば、コンピテンシーを身につけたうえで、どのような目標を目指すのかについても、一人一人で大きく変わってくるでしょう。そのため、Education2030では、コンピテンシーについてはDeSeC0の研究成果に立脚する一方で、その目標については、OECDが行ってきたウェルビーイングに関する研究成果を踏まえて、 2030年におけるウェルビーイングを達成するためのコンピテンシーという目標を設定したうえで、議論が行われてきています。

Education2030では、DeSeCoの成果に立脚しながらも、その反省と教訓を踏まえたものにすべくプロジェクトの制度設計が行われてきました。以前述べたように、DeSeCoで示されたキー・コンピテンシーは、多くの国に対して影響力を有するに至りましたが、一方では、様々な課題も指摘されています。それらの課題について考察していきます。

第一に、キー・コンピテンシーが理論的・抽象的過ぎて、教室での実践やカリキュラム作りなどの政策立案に具体的な形で活用できず、実行可能性に欠けるという点を挙げています。