女性の社会参画

OECD加盟国のほとんどの国において、女性労働者の割合は上昇していますが、それは、必ずしも平等な機会が与えられていることを意味するものではないと白井氏は言います。実際問題として、家庭と仕事の両立にはいろいろな困難が伴うし、管理職や起業家などについて見ると女性の割合はなお低いのです。また、賃金についても依然として男女間での格差が見られます。労働機会や賃金の格差の是正は、社会的、政治的にも重要ですが、経済的にも意味があると言うのです。というのも、IMF (国際通貨基金)の試算によると、労働市場において男女間の格差が生じていることによって、地域によって最大で一人当たりGDPの27%分もの損失につながっているというのです。女性の労働参加を男性レベルに引き上げることで、アメリカで5 %、日本で9%、ニジェールやパキスタンでは30%までGDPが拡大するといわれています。

また、女性の社会参画に伴う必然的な結果として、出産年齢が上昇するとともに、保育サービスの必要性が高まってくるなどの社会的な変化が生じてきます。これからは、より多様な家庭の在り方を前提にして、例えば、労働市場に対する新しいルール作りや、福祉制度の在り方などを考えていく必要があるだろうと白井氏は言うのです。他にも、結婚する夫婦の割合が減少している一方で、離婚率が増大したり、あるいは制度上の結婚という形にとらわれずに一緒に暮らすという選択肢も増大しています。こうした変化は、従来とは異なる形の家族の下で生まれ、育てられる子どもが増えていくということでもあるのです。

次の変化は、「肥満や自殺の増加」です。これは、健康に関連する課題の一つです。子どもの時に肥満になると、大人になってもそれが続く傾向にありますが、肥満は、心血管系の疾患や糖尿病、癌、変形関節症などの病気のリスク要因であるとともに、生活の質(QOL)を下げたり、若年での死亡につながったりするといわれています。世界保健機関(WHO)によると、2020年現在、世界全体での肥満は1975年から3倍になっているといいます。5歳から19歳までの幼児や若者について見ると、1975年には標準以上の体重か、あるいは肥満なのは4 %に過ぎませんでしたが、2016年には18 %になっているそうです。もっとも、日本は肥満の割合が少なくOECD加盟国中では最少となっています。

また、自殺も大きな社会問題であり、世界中では、年間約80万人の自殺者が出ていると推計されています。自殺の原因は様々であり、うつ病や双極性障害(躁うつ病) 、統合失調症などの精神疾患を抱える者も多いようです。また所得の低さや失業、アルコールや薬物、社会的孤立なども、自殺の原因になっているとも考えられています。近年では、全体的に減少している国が多いのですが、韓国のように増加している国もあるようです。日本は、10年前とほぼ同じですが、微増しています。

最後が、「政治への市民参画の低下」です。前にも書いたように、政府に対する信頼の低下が見られる一方で、議会選挙に際しての投票率という形で、政治への市民参画の状況も明らかになってきています。政治への市民参画を測る一つの指標として、投票率の推移を見てみると、OECD加盟国においては、軒並み、投票率の顕著な低下が見られるようです。投票は、市民が社会を変えるための重要な行動の一つであるにもかかわらず、その機会を活用せずに放棄している層が相当の割合でいるということです。