オートメーション化

「富める者」と「そうでない者」の格差の拡大という変化の背景には、貿易障壁が下がるなど経済のグローバル化が進展するとともに、デジタル化の特徴として、先行企業がマーケット全体を掌握するという事象があわさって、「勝者総取り型」の経済を創り出したことがあると考えられています。「勝者総取り型」の経済の問題は、企業のオートメーション化が進んで、生産性が向上しても、その結果が労働者の賃金の上昇につながらず、その利益が資本家に集中していくことにあります。すなわち、富の格差の拡大につながっているのです。ピケティが明らかにしたように、例えばアメリカなどにおいては、経済的な不平等はむしろ拡大しているといいます。今後、ロボットなどのテクノロジーの価格は、普及するに伴って下がっていくことが予測されますが、そうなると、GDPシェアに占める労働者の寄与分についても、当面2030年に向けて低下し続けると考えるのが自然であると白井氏は言うのです。すなわち、何らかの新しい変化が起きるか、政策的な介入が行われない限り、GDPが増えた分は、そのまま資本家のものとなる可能性が極めて高いというのです。

2番目の経済面での変化は、「雇用のオートメーション化」です。雇用上の問題を考えるうえで重要なのが、OECDの各種報告書においてしばしば用いられるデータです。

明確な傾向が見られるのが、ルーティン的なタスク(仕事)に対する需要の減少です。ここでいうルーティン的なタスクとは、「十分明確に定義されており、プログラムを実行するコンピュ一タか、あるいは、途上国の比較的教育レベルの低い労働者であって、ほとんど裁量の余地がないタスクを行う者たちによって実施されるもの」とされています。具体的な例として挙げられているのが、簿記や事務、単調な製造業務などですが、こうしたタスクについては、コンピュータによって代替されたり、労働力の安い途上国に取って代わられてしまうことが予測されています。

その反面、非ルーティン的なタスクについては、異なる傾向を見せていると言います。オーターらは、非ルーティン的タスクを大きく2種類に分けていますが、一つが「抽象的タスク」であり、もう一つが「マニュアル的タスク」です。「抽象的タスク」とは、間題解決能力や説得力、感性、創造性などを要する仕事であり、何らかの分析を行うものであったり、あるいは人間関係に関するものなどです。こうした「抽象的タスク」については、法律学や医学、科学、マーケティングやデザインなどの分野において特徴的に見られるといいます。「抽象的タスク」をこなすことができる人間は、コンピュータに仕事を代替される脅威にさらされているというより、むしろ、コンピュータを活用することの恩恵のほうが大きいと考えられます。実際、「抽象的タスク」については、特に1970年頃を境目として、以降急速に需要が増えてきていることがわかると言います。

一方の「マニュアル的タスク」とは、状況に応じて臨機応変に対応したり、対人関係スキル、視覚や言葉を通じて状況を認識する力などを要するもので、例えば、食事の準備、トラックの運転、ホテルの部屋の清掃などが挙げられています。しかしながら、非ルーティン的なタスクの中でも、「抽象的タスク」に対する需要が増加傾向にあるのに対して、「マニュアル的タスク」については、1960年代から減少傾向にあります。