21世紀型スキル

2002年から、アメリカで官民共同による検討が進められた「21世紀型スキルのためのパートナーシップ」は、「P21」と言われていますが、この内容は、アメリカにおける幼稚園から高等学校までの初等中等教育を通じて、教師やビジネス関係者、政策立案者などに21世紀に対応した教育を準備させるとともに、全ての生徒にとっての21世紀型スキルの重要性について、国民的な議論を喚起するために始められたものです。そして、このP21は、教師や教育の専門家はもちろん、ビジネス分野からも様々な情報提供を得ながら、「仕事や生活面で、また一人の市民として成功していくために必要な知識やスキル、21世紀型の学習の成果につながるような必要な支援の仕組みを定義し、示したもの」です。

具体的には、①生活・職業に関するスキル(リーダーシップや責任、柔軟性や適応力、社会的スキルや異文化理解のスキルなど) 、②学習・イノベーションに関するスキル(批判的思考力〔critical thinking〕、コミュニケーション〔communication)、協働性(collaboration〕、創造性〔creativity〕)、③情報やメディア技術に関するスキルなどが挙げられており、こうしたスキルを支えるものとして、中核となる教科と3つのR ( 3Rs)、21世紀に向けたテーマ(世界、環境、健康、ビジネス等)が示されています。以前のブログで紹介した6Csにも通じるものがありますね。同じような言葉がいろいろなところに出てきます。

もう一つ、その名称からしても「21世紀型スキル」の代表的事例として、P21よりも少し後となる2009年から始まったATC21S (Assessment and Teaching of 21Century Skills)による取り組みについても、白井氏は取り上げています。ATC21Sは、マイクロソフト、インテル、シスコシステムズなどの世界的企業が中心となった産官学の共同によるプロジクトです。ATC21Sで提案されている21世紀型スキルとしては、①思考の方法(創造性とイノベーション、批判的思考・問題解決・意思決定、学び方の学習・メタ認知)、②働く方法(コミュニケーション、協働性)、③働くためのツール(情報リテラシー、 ICTリテラシー) 、④世界の中で生きる(地域とグローバルの良い市民あること〔シチズンシップ〕、人生とキャリア発達、個人の責任と社会的責任〔異文化理解と異文化適応能力を含む〕) 、といったことが挙げられています。

さらに、その他の21世紀型スキルに類したコンピテンシーの枠組みとして、例えば、EUによる「ヨーロッパ参照枠組み(European Reference Framework)」( 2006年)やUNESCO (国際連合教育科学文化機関)による「グローバル・シチズンシップ教育(Global Citizenship Education)」( 2015年) 、欧州評議会による「民主主義文化のためのヨーロッパ参照枠組み(Europe Reference Framework of Competence for Democratic culture)」(2016年)、enGaugeと呼ばれるプロジェクトが示した「21世紀型スキル(21Century Skills)」( 2002年) 、ヒューレット財団による「より深い学びのためのコンピテンシー(Deeper Learning Competencies)」( 2010年)など、国際機関や民間シンクタンク等からも様々な「21世紀型スキル」に関する提案が出されているようです。こうした提案は、それぞれの提案者の立場や意図が異なるものであり、例えば、産業界のニーズを踏まえた提案もあるし、生活や仕事をしていくうえでの必要性を重視したものもあるなど多様ですが、なんとなくそのタイトルだけを見ても、今後検討しなければならないものが見えてきますね。白井氏も、同様に共通なものを見出しています。

21世紀型スキル” への6件のコメント

  1. あらゆるところからこれからの時代に必要な力というのが示されているのですね。そしてどの能力も確かに共通する部分があるということを感じます。「こうした提案は、それぞれの提案者の立場や意図が異なるものであり、例えば、産業界のニーズを踏まえた提案もあるし~」とありました。確かに、それぞれの業界なりに求められる力が異なるでしょうし、その団体なりの意図もあるのでしょうから丁寧にみていくことが必要なのかもしれませんが、「なんとなくそのタイトルだけを見ても、今後検討しなければならないものが見えてきますね」とあるように、共通するもの見ていく、なんとなくの傾向を感じ取っていく重要性を感じました。創造性や問題解決能力、協働性やコミュニケーション能力、批判的思考などなどは私たちの保育での実践そのものでもありますし、よりそういうものを意識した実践というのを保育の現場から発信していかなければいけないのかもしれません。

  2. P21という試みがあるのですね。G7のようなネーミングのかっこよさがありますね。その試みでは、「教師や教育の専門家はもちろん、ビジネス分野からも様々な情報提供を得ながら」という言葉がありましたが、やはり、専門分野だけではない、多方面からの学びや多角的視点があることが政策や企画がより良いものになる印象があります。また、「仕事や生活面で、また一人の市民として成功していくために必要な知識やスキル、21世紀型の学習の成果につながるような必要な支援の仕組みを定義し、示したもの」ということで、教育基本法の教育の目的ともかぶる内容ですね。将来、立派な市民としての能力を発揮し、それが自分や社会のための支援につながるようなシステム作りというのは、世界各国のテーマでもあることが伝わってきます。

  3. 20世紀を総括した結果が、21世紀型〇〇、ということなのでしょう。ミレニアムという概念は時間のグローバル化であると同時に、世界規模でのイノベーションの時代を象徴した概念でしょう。世界のトップのシンクタンクが21世紀になすべきことをテーマに掲げながら模索し始めていることがよくわかります。特に、教育の分野における刷新、革新を求めようしています。ところが「教育」分野は前例踏襲主義ですから、何よりも変わりがたい。まるで海水温ですね。周囲環境が変わって、やがてゆっくりと変わっていく、そういった性質を「教育」は帯びているのでしょう。その意味では、周囲環境に触発されながら、教育分野自体の変革を起こしていくという動き、まさにこれでもか、これでもか、という動きをして始めて変わっていく分野が教育分野でしょう。教育の現状に歯がゆさを感じている人々にとっては一種耐えられなさがあるのでしょう。しかし、そこは次代を見据えた一手、こそが功を奏するのでしょう。

  4. 「21世紀型スキル」という言葉を見ると、やはり自分は藤森先生の「21世紀型保育のすすめ」の本を思い浮かべます。あの本を読んで感想文を眠たいのを堪えながら書いたことを…。話がそれました。
    各国や各分野が新しいものを出している21世紀というのは、これまでのものが変わってきている、変わるんだよということの証明であろうと思います。また、こんなにも多方面からいろんなものが出されていることで、多角的な視野がよりいいものをいい議論を生み出すだろうということが伺えます。明確に昔とは違うということを認識しながらの保育を展開していかなければならないことを感じます。

  5. どの提案においても、同様に必要とされる21世紀型のスキルというものは共通しているものが多いですね。問題はこれらのスキルをいかにして意味のあるものにするのかとことが教育界には重要なものであると思うのですが、それにおいて、PISA等、経済界からの視点も非常に重要な視点であるということが見えてきます。教育と経済とはまったく別の業態ではなく、密接に関係しているということをしっかり理解していなければいけないことが多いというのはとても感じます。日本においても、そのあたりがやはり大きな壁があるように思います。いったい今行っていることがどこに向かっているのか、教育における責任はとても大きな影響をはらんでいるように感じます。

  6. シチズンシップ、良い市民であること、という言葉、先日のブログを思い出し、このような日本人にしっくりこないような言葉も、世界ではとても腑に落ちるような感覚で理解されているのだろうと思うと、日本人の国への、自分の住む街への価値観というのは、世界と異なっているのだろうと想像してしまいます。

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