キー・コンピテンシー

コンピテンシーの中からキーとなるものを抽出するというDeSeCoプロジェクトの作業において設定された基準は、以下のとおりです。

・学習可能であること(一定程度、教育可能であること)

・様々な文脈における重要で複雑なニーズを満たすために役立つこと

・誰にとっても重要であること

・メタ認知など高次のスキルを含むこと

・社会的に高い価値が認められる結果につながること(例えば、個人のレベルでは雇用・収入・健康・安全・政治参加・知的な資源の獲得・社会的ネットワーク・文化的活動への参画などであり、社会のレベルでは経済的な生産性・民主主義的プロセス・社会的連帯・結東・人権・安全・公平・平等・持続的な環境といったこと)

ここには、 DeSeCoが追求しようとするキー・コンピテンシーの理念がよく表れており、「様々な文脈」において「役立つ」とか.「誰にとっても重要」ということは、すなわち、どのような文脈であっても適用できる、汎用性の高いコンピテンシーを特定しようとする考え方であると言うのです。また、例えば、プログラミングを組むことができるとか、木工で椅子を作ることができる、といった具体的なコンピテンシーよりも、創造的思考力や批判的思考力など、より抽象度の高いコンピテンシーのほうが汎用性が高いと考えられます。ここでは、「メタ認知など高次のスキルを含む」とすることで、そうした汎用性の高いコンピテンシーを重視していることがうかがえると言います。

とはいえ、キー・コンピテンシーを特定していくためには、一定の価値判断を伴わざるを得ません。上に挙げた基準の一番最後にある「社会的に高い価値が認められる結果につながること」については、例えば、人権や平等、民主主義、環境に関することなど、一般に普遍的と考えられる価値が挙げられています。しかしながら、これらの一見議論の余地がないように見える概念であっても、当然、国や地域、社会や文化、宗教などによって、具体的な解釈が異なることが考えられます。その意味では、価値判断の前提になるのは、社会的・経済的・文化的な文脈ということになるのですが、キー・コンピテンシーの検討に際しては、国際的に受け容れられている規範として、国際人権宣言やリオ環境宣言などの国際的な取り決めや協定などを参考にしているそうです。また、哲学者から出された意見を踏まえて、「良い生活(Good life)」を送るために普遍的に必要なこととして、「他者との良好な関係」、「自己や自己の世界についての理解」、「自分の置かれている物理的/社会的環境との自律的な関係構築」、「達成感や楽しさ」といったことが挙げられています。

こうした選択の基準に基づいて、各分野の研究者からの理論的な貢献を踏まえながら、プロジェクトにおける概念の検討や修正などを経て、最終的にキー・コンピテンシーとして特定されました。「異質な人々から構成される集団で相互にかかわり合う力」、「自律的に行動する力」、「道具を相互作用的に用いる力」の3つです。なお、キー・コンピテンシーの枠組みの中心には「省察・振り返り」が置かれています。この「省察・振り返り」は、「メタ認知的な技能(考えることを考えること) 、批判的なスタンスを取ることや創造的な能力の活用である」としています。

キー・コンピテンシー” への5件のコメント

  1. 「どのような文脈であっても適用できる、汎用性の高いコンピテンシーを特定しようとする考え方」は、乳幼児教育が考える「伸びしろ」「人格形成の基礎」「生涯発達の基盤」「生きる力」などと関連するようにも思いました。いついかなる時・環境下でも必要になる能力を育もうとするのは、教育の目的であり、それが社会の形成者としての資質につながっていくのでしょうね。キーコンピテンシーとして、「かかわり合う力」「自律的に行動する力」「道具を相互作用的に用いる力」があげられていましたが、3つ目の「道具を相互作用的に用いる」とはどのような能力でしょうか。ものの仕組みを理解し、それを使って別のものに役立てる、STEMの「技術」や「工学」の要素があるのでしょうかね。

  2. 「こうした選択の基準に基づいて、各分野の研究者からの理論的な貢献を踏まえながら、プロジェクトにおける概念の検討や修正などを経て、最終的にキー・コンピテンシーとして特定されました」とありましたが、このようなプロセスそのものが互いの意見を尊重し、合意形成をしていくというまさに、対立やジレンマを克服する力そのもののようにも感じました。日本の中でさえも、また職場の中でさえも異なる人だらけです。日本という同じバックグラウンドを持っていながらも、それまでの経験や個性などによって全く異なる考え方をそれぞれが持っています。ましてやそれが世界規模になればその異なるものは増大していきますね。そんな中からである方向性を見出したり、合意形成していかなければいけない時代になってきました。世界だけではなく、日々暮らしの中で人と人とが調整していくというのは非常に重要な力ですね。

  3. コンピテンシーの中でキーとなることを特定することは、そのコンピテンシーということを考える上でとても参考になります。むしろ、コンピテンシーを机上の理論として崇め奉るのではなく、これからの世界に貢献できる力として、すなわち実用的力として認識することはとても重要ですね。その意味で今回のブログの最後の部分の「「異質な人々から構成される集団で相互にかかわり合う力」、「自律的に行動する力」、「道具を相互作用的に用いる力」の3つ」という括りは本当に参考になります。例えば、私が従事する就学前施設に集う子どもたち一人一人のコンピテンシーを考える時、これら3つのキーとなるコンピテンシーは、就学前の保育の方向性を明確に示してくれます。先生による「指導」や計画における「ねらい」はキーではないことを如実に語ってくれています。指導やねらいに拘泥する計画と評価では子どもたちの明日がないどころか、私たち人類の未来もない、ということになりますね。ここで示されたキー・コンピテンシーは過小評価されてはならないでしょう。

  4. 最後にキーコンピテンシーが3つ挙げられていました。「異質な人々から構成される集団で相互にかかわり合う力」、「自律的に行動する力」、「道具を相互作用的に用いる力」の3つですが、この3つは自分たちが行っている保育の考えと重なるものであることを感じました。そして、誰かに教えられるものでもない、与えられるものでもないものであることを感じます。
    主体的に育まれていくものであり、そうしていくことで周りにも育まれやすい環境が整っていくような相互作用していくことを感じました。いい個はいい集団を、いい集団はいい個をのカタチな気がします。

  5. 『「様々な文脈」において、「役立つ」とか「誰にとっても重要」ということは、すなわちどのような文脈であっても適用できる、汎用性の高いコンピテンシーを特定しようとする考えかた』とあります。まず、この前提を捉えていなければいけませんね。何事においてもその中心となる理念であったり、原理というものが伴っていなければ、ただのパフォーマンスでしかなく、本質に近づくことは困難かと思います。そのうえで、「良い生活」を送るために必要なこと、最終的に特定されたキー・コンピテンシーというものにつながるのですね。そして、その理解に近づくための「省察や振り返り」やはりここで「他律」ではなく「自律」的に自ら自己評価するということが重要になってくるのですね。

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