どのような未来が訪れるのかは、様々な要因によって変わってきますが、とりわけ、 AI等の技術の急激な発達により、フレイやオズボーンの試算によれば、アメリカの労働市場における職業の約47%がコンビュータ化のリスクにさらされていると言います。この主張の論文は、「10~20年程度のうちに自動化される可能性が高い(70%以上)仕事は、全体の47%)というもので、私もよく講演の時に使うものですが、実はここでいう10~20年程度のうちにという時期が、今回の新型コロナの影響で早まる可能性があると思っています。白井氏も、日本国内でも、例えば銀行や証券会社がローンの審査などの業務をAIに代替させ、その分の人員削減を行うなど、その影響が見え始めていると言います。金融業界を含め、伝統的に安定的と見なされてきた職種についても、急激な変化が生じる可能性があるというのです。
また、AIと並んで、ヨーロッパやアメリカにおける急速な移民の増加は、様々な政治的・社会的なリスクにつながっているとも言います。そもそも、移民をどの程度受け入れるのか.受け入れるとして社会的にどのように受け入れていくのかといった問題は、それぞれの社会にとって非常に大きな問題です。仮に、積極的に移民を受け入れたとしても、その受け入れ方次第では、社会的な格差や不平等が増し、治安の悪化やテロリズムなどの新たな問題を生み出す可能性もあるというのです。
AIの発達や移民の増加は、2000年代に入っての大きなトレンド(傾向)として考えられますが、他にも、例えば、地球温暖化による環境の変化や女性の社会進出による家族の形態の変化など、様々な変化が生じています。もちろん、未来を完全に予測することには限界はありますが、一方では、これまでのトレンド(傾向)を踏まえることで、「より正確と考えられる」予測につなげることはできるというのです。そこで、Education2030プロジェクトでは、コンピテンシーやカリキュラムについての議論の前提として、社会変化のトレンドのうち主要なものをメガ・トレンドとして、今後の社会変化についての将来予測を行うこととしたのだそうです。
様々な分野や領域のトレンドが考えられますが、ここでは、Education2030プロジェクトにおける議論において実際に用いられたデータを参考にして、( 1 )社会における変化、( 2 )経済面での変化、( 3 )個人における変化、という3つの観点に分けて、具体的にどのようなトレンドが観察されているのかを白井氏は紹介しています。なお、ここで対象としているのは国際的なメガ・トレンドですが、国や地域によって、それぞれのトレンドが大きな影響をもつ場合もあれば、そうでない場合もあることには改めて留意したいと言います。例えば、後述する失業率の悪化や肥満の増大は世界的なトレンドではありますが、日本の場合にはいすれも低い水準にあります。
まず、第一に、社会レベルでの変化についてです。具体的には、移民の増加、 地球環境の変化、政府に対する信頼の低下、テロやサイバー犯罪の増加などを挙げています。それらをひとつずつ検討していきます。