スポーツは遊び?

日本では、今日でも「体育会系」は日本スポーツ文化を特徴づける価値体系ですが、一方で実際の部活を見ると、昨今の体育会系の反省からか、根性論と一線を画すトレーニング方法や生涯スポーツを追求する動きも出てきているようです。しかし、スポ根アニメで育った指導者やその影響を受けた人はまだまだ現役で活動していて、「スポーツは遊び、気晴らし」という定義にしっくりこない人も多いのではないかと高松氏は言います。

高松氏自身にとって、「スポーツとは遊び」という考えに対する違和感が氷解したのが、ドイツのスポーツクラブだったそうです。老若男女が日常的にスポーツをする場で、しごきや体罰とはまったく無縁です。日本における勝利偏重の部活の雰囲気からみると「ゆるゆる」にすら見えると言います。なぜ非体育系の「ゆるゆる」のスポーツになったのでしょうか。歴史を見るとある程度説明がつくと言います。戦後の旧西ドイツのスポーツは当初、競技志向が強いものでしたが、変化を遂げるのが1960年代からです。西ドイツは1950年代に「経済の奇跡」と呼ばれる経済復興を遂げます。こうした中、1959年にドイツスポーツ連盟(DSB)から、国民の健康を意識した「第二の道」という考えが出てきます。競技スポーツが「第一の道」とすれば、余暇のためのスポーツが「第二の道」というわけです。同時にドイツオリンピック協会(DOG)によって、スポーツ施設などを拡充する「ゴールデンプラン」という提案も出てきます。その後、1970年代にドイツスポーツ協会(DSB)によって「トリムアクション」という健康増進の運動キャンペーンが行われます。これらは政府主導ではなく、スポーツ団体が発端です。ゴールデンプランなどは、必要な資金を州や連邦などから引き出してきました。トリムアクションについても、エアランゲン市の戦後のスポーツ史をひもとくと、頻繁に行われていたそうです。実際そのころ子どもだった人にきいても、「そういえば、トリムアクションに参加していた」と記憶に残っている人もいたそうです。また、トリムアクションとは別で、健康増進のための余暇スポーツを市内でスポーツクラブや行政のスポーツ部署と一緒に展開しています。

一方、余暇活動には当然「余暇」がいります。余暇とセットになるドイツの労働時間の経緯を見てみます。すると、1900年に週6日60時間だったものが、1932年には42時間、1941年に50時間、1950年48時間、1956年には週5日への移行がありました。そして、1965年には40時間、1984年には38.5時間、そして1995年には印刷、金属、電機産業で35時間と推移しています。このような労働時間の短縮は、労働運動などの賜物ですが、戦後のみを見ても1950年代、経済復興に伴い労働時間が減っていくのがよくわかります。現在は週40時間ですが、一時的に35時間にまで短縮した業界もあります。高度経済成長に伴い長時間労働が増えた日本と対照的だというのです。

また、ドイツといえば病欠とは別に、休暇のとりやすい国としても知られています。今日の長期休暇を規定しているのは、1963年に施行された連邦休暇法です。最低限24日の年休を設定することになっていて、多くの企業は30日の有給休暇を規定しています。ちなみにEU加盟国に対して達成を求める「EU指令」では4週間の年次有給休暇が明記されています(EU労働時間指令、1993年)。このため、平日でもスポーツクラブで何らかの行事のために休日が必要になっても、簡単に体めるのです。

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スポーツは遊び?” への4件のコメント

  1. 病欠とは別に、休暇のとりやすい国、ドイツ。スポーツクラブへ参加のしやすさの背景には、このような仕組みも存在しているのですね。働きすぎな日本人は、これを聞くと間違いなく羨ましがるでしょう。もし、我々日本人が、ドイツ人のような長期休日を得たら、一体何をするのでしょうかね。海外に行ったり、したこともないことに挑戦するのでしょうか。他国を旅した際、欧米の若者の旅行者が非常に多いことに気が付きました。話を聞くと、大学に入る前や長期休み期間には、旅をするのが主流なんだということでした。日本よりも、陸地続きであることやシェンゲン協定加盟国であるというアドバンテージがあるにせよ、どこか挑戦的で異文化交流、他者交流を望む実に社会的存在である印象を受けました。国民の休日を増やす前に、やるべきことがあるのかもしれませんね。

  2. 近くの公園にテニスコートがあります。老若男女の方々がテニスに汗を流しておられますが、部活とは違い、まさに体を動かすことを楽しんでいる、スポーツを楽しんでいるという印象を受けます。きっと終わった後は心も体を軽くなっているまさに、気晴らしになっているんだろうなと想像します。確かに余暇活動には余暇が必要ですね。ドイツの労働時間は日本と比べるとかなり少ないですね。日本も少しずつ雰囲気、意識が変わってきている印象を受けますが、それでもまだまだ労働時間は全体的に長いんだろうなと思います。物理的な時間がないと何かをするという気が起きてことないのではないでしょうか。仕事もあり生活もあるので、やらなければいけないことをしていたら時間はあっという間ですね。かつてに比べれば便利な物、便利なサービスが増えたのでそれだけ時間に余裕ができるのではと思ってしまいますが、そうでもないのが現状でもあるのかもしれません。

  3. スポーツというと、どうしても、勝ち負けを意識する競技、という刷り込みがあります。子どもの頃、野球や陸上競技などをやっては、負けたくない、という一心で文字通り頑張りました。その後は、スポーツとはほぼ縁のない生活を送りながら大人になりました。テレビで野球や相撲を観ては勝ってなんぼの世界という感覚をもちます。余暇、リクリエーションとしてのスポーツという感覚はもち合わせていません。ドイツの人々のスポーツに対する考え方はとても参考になりますね。「ゆるゆる」でいいのなら、私もスポーツの何かをやってみたいですね、楽しく。

  4. 休みをとりやすい国というのはなんとも羨ましいことです。息子がサッカーをしていますが、息子の歳が上がるにつれて、試合の送迎やらで、仕事の休みを変わってもらったり、祖父母にお願いしたりなど大変です。このまま下の子も同じようになるのかと思うと、現時点でどうなるんだろうと思っていますが、そんな悩みとはかけ離れているのがドイツなんでしょうね。「ゆるゆる」というドイツと「かつかつ」な日本では子どもにスポーツをさせようとすることにも抵抗感に違いがあるように感じました。

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