移民家庭

移住者は経済的苦難や不安定な状況に苦しむことが多いのですが、多くの移住者は移住先の国に貴重な知識や技術を持ち込みます。OECD加盟国の平均では、2 015年のPISAに参加した移民の第一世代の生徒の大半は、両親のうち少なくともどちらか一人は移住先の国の平均的な親と同じくらいの期間学校に通っていました。

また同様に顕著なのは、社会経済的環境を考慮しても、移民家庭の生徒と移民家庭でない生徒では全国的に成績差が著しいことだと言います。移住以前に習得した文化や教育が成績に影響を与えたとしても、移民家庭の生徒の移住先の国による影響はさらに大きいとシュライヒャーは思っています。

しかし、移民家庭の生徒のニーズ、特に言語学習の教育政策は簡単ではなく、また教育政策だけでは十分ではありません。例えば、移民家庭の生徒のPISAの成績は、移民家庭の生徒あるいは家庭で授業と異なる言語を話す生徒が集中することよりも、学校に恵まれない子どもが集中することに強い負の相関を示しているそうです。学校への恵まれない子どもの集中を減らすには、住宅や福祉事業等の他の社会政策の改革が必要かもしれないと言います。そうすることで、よりバランスのとれた社会的混合が促されるであろうとシュライヒャーは考えています。

1970年代に熟練度の低い移民のヨーロッパへの流入が急増した時、オランダは大規模な特別公営住宅を建設し、移民を受け入れることを選んだことを考えてみてほしいと言います。オランダと同様の方針で学校を運営する隣国ベルギーのフランドル地域は、どこでも好きな地域で利用できる移民住宅費用相当のバウチャーを移民に提供しました。その結果、フランドルには移民家庭の生徒だけで構成される学校はほとんど生まれなかったそうです。

何年も後になって、オランダは特別公営住宅で暮らす生徒の教育で大きな課題に直面しました。生徒は学校に馴染めず、成績は低いままだったのです。対照的に、移民が分散していたベルギーのフランドル地域の移民家庭の生徒は、住宅の分離によって学校差別がもたらされたオランダの移民家庭の生徒と比べてずっと優秀な成績を収めていたのです。

移民家庭の生徒の多くは、学校で大きな問題に直面します。生徒は、異なる教育制度に素早く適応し、新しい言語で学び、移住元と移住先の居住地の両方を統合した社会的アイデンティティを形成し、家族や仲問からの相反する圧力に耐えなければなりません。移民たちが貧困地域の恵まれない学校に分離されると、このような困難はますます拡大します。PISAのデータが一貫して、移民家庭の生徒と現地で生まれた生徒の成績格差を示していることは驚くことではないと言うのです。

しかし、一方、多くの移民家庭の生徒がこのような障害を乗り越え、優れた成績を上げることを見落としてはならないと言います。生徒が直面する相当な困難にもかかわらず、学校で良い成績を上げていることは、生徒自身と家族が高い意欲、やる気、寛容さを持っている証であると言うのです。