学校選択と私立学校への助成金による潜在的な悪影響、特に差別や社会の階層化を軽減するために、各政府は代替的な資金保障の仕組みを構築してきました。例えば、チリ、ベルギーのフランドル地方、オランダは、加重子ども資金助成をおこなっているそうです。これは子どもごとに助成金を割り当て、社会経済的背景やそれぞれの子どもたちの教育ニーズによって助成金額を決定するものです。このような恵まれない子どもたちを対象にした助成があることで、入学者数を競う学校は恵まれない子どもたちを受け入れやすくなっているようです。
フランスやギリシャに設置された「教育優先特区」のような地域に特化した支援制度は、学校間の成績の違いが大きく、特定の地域に成績が低い学校が集中するような場合に見られるようです。ベルギーでは、市場の大部分を構成する政府助成の私立学校は、公立学校とほぼ同額の助成を受けており、授業料を課したり入学者を選抜することは禁じられています。
公的資金が私立学校に供給される仕組みに細心の注意を払うことも重要だと言います。一つの方法はバウチャーによるもので、これは保護者への直接的な支援となります。2009年時点で、OECD加盟国でデータが利用可能な22か国のうち9か国は、政府助成の私立学校への入学を促すためにバウチャーを導入しています。そのうち5か国では、バウチャー制度の利用を恵まれない子どもたちに限定しています。24カ国のうち11か国では中学校でバウチャー制度を使用しており、そのうち7か国では恵まれない子どもを対象としていたそうです。高等学校では11のバウチャー制度のうち5つで収入調査が実施されていました。調査されたOECD加盟国の中で、7か国は小学校から高等学校までバウチャーを提供してしました。授業料税額控除は、保護者が私立学校の費用を税金負担額から控除できるものですが、バウチャーと比べてあまり利用されていないようです。2009年時点で、データを利用できるOECDの26か国のうち、税額控除を使用して政府助成の私立学校への入学を促しているのはわずか3か国だったそうです。
全ての生徒が利用できるバウチャー制度と、恵まれない子どものみを対象としたバウチャー制度の間には、学校選択の悪影響を軽減する役割において大きな違いがあるとシュライヒャーは考えています。全ての生徒が利用できるバウチャーは、学校選択の範囲を広げ、学校間の竸争を促すことになります。恵まれない子どものみを対象としたバウチャーは、学校で学ぶ機会の公平性の改善に役立ちます。私立学校への助成が同程度の国や地域を比較すると、バウチャー制度と対象を限定したバウチャー制度では、公立学校と私立学校の社会経済的環境に2倍もの大差があることがPISAによって示されたそうです。
バウチャー制度のあり方は、成功への重要な鍵を握っていると言います。例えば、私立学校の授業科や入学選抜基準を規制すると、バウチャー制度による社会的不公平を減らすことができそうだと言います。
さらに、それだけではないと言います。