教育支出

シュライヒャーは、以前にも述べているように成績上位国では、小規模クラストより良い教員のいずれかを選択しなければならない場合、より良い教員を選択しているようだといいます。その代表国として、彼は日本を例に挙げているのですが、今回それほどでもありませんが、日本でも小規模クラスを目指そうとしています。それは、西洋諸国の多くは小規椣クラスを選択しているからということもあるのかもしれません。しかし、成績上位国での取り組みにおいて、クラス規模よりも良い教員育成に力を注いでいる代表の日本として、今後どのような結果が生まれるのか問われてくるでしょう。

2006年から2015年までの初等教育、中等教育、中等後非高等教育の教育支出は、OECD加盟国全般にわたり20 %近く増加したそうです。にもかかわらず、同じ期間に大半の加盟国は、小規模クラスを優先し、より資の高い教員や授業時間の充実、生徒への個別対応および教育機会の均等を後回しにしたとシュライヒャーは指摘しています。世論による圧力と人口動態の変化を受け、政府は中学のクラス規模を縮小し、OECD加盟国全般では平均6 %の減少となったようです。保護者や教員の意見に引きずられ、長い目で見て子どもたちを成功に導くような予算配分ができなかったとシュライヒャーは言っています。たしかに日本でも保護者や教員の意見に引きずられているきらいはありますね。

大規模クラスを採用する国の教員の給与水準は高いと言います。教員に満足な給与が支払われていれば、より上位の教員養成機関から優秀な教員候補者を採用できます。そうすれば教員は教職に留まり、頻繁な教員の交替や教室での専門補助職員の要請も少なくなります。教員養成機関の数も少なくてすむため、より多くの予算を配分できます。質の低い教員を給与水準の低い機関で養成するといった一見低コストに思われる方法は、全ての費用を勘案すると最終的には高くつく結果になると言うのです。

給与が低い教員を雇用すると、学校はより多くの専門職を必要とし、さらに専門職を監督・調整する管理者も必要とします。トップクラスの国や地域は教員に比較的高い給与を支払いますが、管理者や補助専門職は少なくてすみます。そのためコストは低く抑えたまま、より質の高い教員の雇用が可能となるのです。このように、個々のコストを切り離して見るのではなく、全体としてのシステムのあり方を考え、実質的なコストに注目することが大切だとシュライヒャーは言うのです。

要はスキルと投資の関係は、かなり非対称ということなのです。スキルは磨くほど個人と国に一定の利益をもたらしますが、より投資したからといって教育の質は上がらないのです。

PISAの調査結果からは、幾つかの国や地域が国民の教育に対する改革や投資に体系的に取り組んで自己改革を成し遂げ、教育制度の相対的な存在感を根本的に高めた事例を見ることができると言います。これは、世界がもはや豊かで教育の行き届いた国と、貧しく教育の行き届かない国とに分断されていないことを表していると言います。どの国も優れた教育システムの開発へと踏み出すことが可能であり、もし成功すれば大きな成果が得られます。それはより良い生活、より良い仕事をもたらし、社会を前進させるのです。

教育支出” への7件のコメント

  1. 「保護者や教員の意見に引きずられ、長い目で見て子どもたちを成功に導くような予算配分ができなかったとシュライヒャーは言っています。たしかに日本でも保護者や教員の意見に引きずられているきらいはありますね」とありました。確かに、本当ですね。本質を見失って、目先のことにばかり囚われてしまうとこのようなことになりかねないのかもしれません。やはり、大切なのは理念に戻ることですね。「質の低い教員を給与水準の低い機関で養成するといった一見低コストに思われる方法は、全ての費用を勘案すると最終的には高くつく結果になると言うのです」このあたりも大局を見るというか、小手先の対応ではなく、やはり本質を見ていく、先を見ていくような姿勢が問われますね。小手先のことは一見すると、みんなが納得することのように思えますし、逆に先を見た対応は理解できる人が少ないので、反対意見も多いのかもしれませんが、やはり大局を見ていく、先を見て、今何をすべきか考えることの大切さを感じました。改めて、行動するということが大切ですし、先を見据えて、行動している人は尊敬します。外野であれこれ言うのは簡単なことです。実際に動かしている人がいて、たくさんの工夫をしています。そういう人を逆撫でするような態度だけは自分はとりたくないなと思います。

  2. 給与水準の高さが、優秀な教員の確保・定着率・補助職員の要請減・養成機関減につながることまでは把握していませんでした。「最終的には高くつく結果になる」というように、予算を考える上でも長期的スパンで熟考する大切さが感じられます。また、「小規模クラス」か「良い教員」かの二択の場合、成績上位国では「良い教員」を優先しているとありました。それも、予算の件同様、「最終的」にはどうなることを望んでいるのかを考えた結果なのだなと感じました。「小規模クラス」にしたとして、質の高い学びになるとは限りませんが、「良い教員」を育成し確保すれば、「小規模クラス」を選択するよりも、より確実にそれが可能になりますね。やはり、一貫性のある長期的な見通しが必要なのですね。

  3. 保育士として、生涯学習に取り組んでいく必要性を感じました。リソースが増えなくとも、保育士一人一人が昨年度よりも今年度、来年度と成長していけば、保育の質は明らかに向上していくことでしょう。
    自分自身もまだまだ勉強不足ではありますが、そうした姿勢を示せる人になっていきたいと思います。

    また最後の段落にあるように、これだけ情報が溢れ、おおよそ資本的にも豊かさが広がっている現代です。こと、日本においては、実践者次第で、教育保育の内容は変えることができるのでしょう。

    昨日見た研修の動画では、私立の学校の実践が紹介されていました。チャイムがない、宿題・テストがない、プロジェクト学習がほとんどである、時間割を子どもたち自身で決める…などなど、特徴ある実践が紹介されていましたが、紹介者の話によれば、制度的には公立学校でも取り組めることである、とのことでした。

    何か言い訳を探したり、人のせいにしたりすることなく、私たちに何ができるのか、真剣に考えていきたいものです。

  4. 国連が2015年に採択したSDGsの4は「質の高い教育を」ということで、就学前及び初等以降の教育の質を向上させることを「持続可能な開発目標」としています。21世紀に入り、この20年間で全世界の就学人口は劇的に増加したと言われます。約7億人が絶対貧困の中で暮らしているというデータがあります。学校に行けない子どもが多いのだろう、と私たちは単純に考えてしまいます。ところが、実際は貧困人口も減少していますし、就学人口は反比例して増加しているのです。数値目標を掲げることには賛否両論あるのでしょうが、実際の数字はどうなのか、といことを視野に入れる癖をつけないと「より投資したからといって教育の質は上がらない」という結果を生みだすのではないでしょうか。日本の教育関係者の中には「経済」では教育は測れない、ということを仰います。一理あるでしょう。しかし、「保護者や教員の意見に引きずられ、長い目で見て子どもたちを成功に導くような予算配分ができなかった」となればどうでしょう。その結果として「質の高い教育」が実現されなかったら。「ゆとり教育」や「総合的学習の時間」が正当に評価されていないことが思い出されます。

  5. 単純にお金をかければ質が良くなるという話しではないということなんですね。お金をかけるにしても長期的な見通しをもって、お金をかけるべきかどうかを判断しなければならないということを感じます。
    そして、その長期的な見通しを考えること、それ自体が自身の能力を向上させていくものであるのではないでしょうか。そのようにして、自身のスキルはアップしていくということを理解していき、単純にお金をかければ良い教育になる、小規模であれば目が行き届いていい教育ができる、というようなではなく、どのような環境でも先を見通しながら、長期的な考えが必要であることが理解できました。

  6. 質の低い教員を、給与水準の低い機関で養成すると結果的に高くつく、これはまさに保育士の価値を低くしてしまっている要因なんだろうと感じました。保育士の給与が上がらないのは、保育士という資格の難易度の低さのせいで、なろうと思えば比較的誰でもなれてしまうといった現状にあります。それが結果として保育士不足に繋がり、待機児童問題などが生まれるわけです。この際保育士の上位互換的な資格として、見守る保育士であったり、保育士という資格のなかに付加価値をつけていくことが、結果としてより良い社会を作ることに繋がるのではないかと感じます。乳幼児教育の大切さがより顕在的になっているからこそ、それだけの意味のある仕事になっているということを、国が示すべきなのでしょう。

  7. 教員の給与水準、それによって、その国の教育の価値観がわかってしまうかのようです。ただ、給与を上げるでなく、総合的な取り組みの結果給与水準が高くなる、ということであると理解します。
    保育はどうでしょうか。保育士という仕事では家族を養っていけない、という見方もまだまだあるようです。頭脳労働でもあり、体力勝負でもあるかのようなこの仕事に就いた人が長く続けていけるように、社会が変化していくことを望みます。

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