学習到達度

OECDの教育・スキル局長を務めているアンドレアス・シュライヒャーが提案した生徒の学習到達度調査であるPISAは、世界中の教育政策に大きな影響を与えていますが、これだけではなく、彼が開発監督したツールは、あらゆる国や地域、文化における政策策定者、研究者、教育者が、教育政策と実践の改革に取り組む際の国際的プラットフォームとなっているそうです。

よくOECDと聞くと、所詮経済からの視点ではないかという人がいます。しかし、彼のことを元アメリカ教育長官アーン・ダンカン氏は「グローバルな問題・課題を私の知る誰よりも理解しており、そして真実を話してくれる人物」と述べています。さらに、民主主義の発展に模範的貢献をした人物に授与される、ドイツ連邦共和国初代大統領の名を冠したセオドール・ホイス賞をはじめ、多数の名誉賞その他の受賞歴があります。

彼の提案する21世紀の学校とはどのようなものなのでしょうか?

シュライヒャーによる教育論は、独自の視点に基づいています。彼は、芸術視点から科学的な視点へのシフトを強く説いているのです。そこで、最初の章では「科学者の視点から見た教育」です。その1では、「アートから科学へ」というタイトルがついています。私が今回STEM研究会を立ち上げましたが、多くの人から最近はSTEAMといってARTが入っていると言われますが、私はあえてアートを除いています。それは、アメリカの教育改革を行う上でオバマ元大統領が今までの教育で足りないものを挙げてSTEMを示したように、保育の世界はいろいろなことをアートで表現することに力を入れてきました。もちろんそれは大切なことであり、STEM分野にもアートが必要ですが、そこに足りないものが、科学的視点で保育を見ることだと思ったからです。

シュライヒャーは物理学を学び、医療関連企業に勤務したこともあります。彼によると、物理学者は広く認められた原理と確立された専門的慣例に基づき国や文化を越境して交流をし協力すると言います。これに対して教育者は、一般化されがちな比較論にはかなり懐疑的な立場をとり、全ての生徒を個別に見ようとすると言います。また、医療現場ではまず患者の熱を測り、最適な治療を施すために診断します。教育分野では、全ての生徒を同じ方法で教育し、同じ治療を施し、時には学年末になってからその治療がどこまで有効だったかを診断します。キュ行く政策立案者は、実験や品質保証をほとんど行わず、また、公的説明責任もろくに負わないまま、既存の教育改革の上にまた新たな課企画を上乗せしてきたと言うのです。その現状ですが、かれは教育の世界に魅力を感じ、教育によって生活や社会を変えられると信じていると言います。また、改革の機会を、アートの領域を超えてむしろ科学の領域と捉えているそうです。

教育政策と科学研究の厳密さを適用して生まれたのが1990年代後半に開発されたPISAだというのです。この提案が最初にされたのは1995年にパリのOECD本部で行われた教育省高官たちとの会議だそうです。その会議では28か国の代表者が着席していて、自分たちの教育システムが世界最高だと自慢する者もいたそうです。今でもそのように考えている大学教授がいるように思います。確かにいいと思うから実践しているのでしょうが、もう少し真摯に検討し、何がよくて何の改革が必要なのか、を検討すべきだろうと思うことも多くあります。