同じプロセス

6Csを「時間軸に沿った動き」として捉えれば、何度も同じようなプロセスを繰り返すように見えるだろうとキャシーは言います。学びの目標は異なっても辿るプロセスは類似しているのです。人生の中で、私達の目指す目標は変化します。例えばある人がオーケストラの指揮について学び始めた時、初心者の段階ではオーケストラとコラボレーションするための方法を新たに身につけなければなりません。こうなると最初のうちは「横並びプレイ」の段階に戻ってしまいます。楽団員からのメッセージを受けとる余裕もなく、ただ自分の指示を出すことに精一杯です。しかしやがて練習を重ねるうちに、バイオリン奏者が教えてくれる合図を「読む」ことができるようになり、次の段階へと進化するのです。「べートーべンの交響曲の楽譜」という知識コンテンツも最初は楽譜通りにしか読めませんが、クリティカルシンキングの力を借りて学び続けることで、過去の名指揮者が楽譜をどう解釈したか理解できるようになるのです。何度も同じプロセスを繰り返しながら、私達は生涯を通じて様々な領域について学び、どこまでも成長し続けるのだとキャシーは言うのです。

学習科学の成果によって、6Csとその段階が明確に示されることで、学習者の学びの進み具合を確かめる新たな道具ができたと言います。表を下から上、すなわちレベル1からレベル4に向かって眺めてみると、どのように成長してゆくのかよく解ります。但しこれらのスキルは殆どの場合、自然に成熟してゆくわけではなく、6Csを育む環境を注意深く準備する必要があるというのです。もちろん、学びがどう進むかは、年齢、レベルによって異なりますが、スキルのレベルを上げるには適切な経験を積み重ねることがポイントとなるというのです。

言葉の発達はコミュニケーションの力を高める上で不可欠です。赤ちゃんは泣いたり、音を出したり、微笑んだり、声を上げて喜んだりして自分の感情や要求を示します。こうした自発的な反応を更に強め、学びを促進するには大人が沢山の言葉を子どもにかけてあげることが大事です。赤ちゃんが興味を持ったことについて語りかけることが、よりスムーズにコミュニケーションの階段を上るのを助けます。大人の語りかけは、子どもが日常生活の中で言葉を自然に使いながら語彙を増やすことに繋がり、学校で知識コンテンツを学ぶ時に大いに役立つのです。

クリティカルシンキングについては、ディアナ・キューンが教えてくれたように多様な視点で考える練習をすれば、誰でもトレーニングができます。異教徒同士で対話することはキューンの実験を現実の世界で応用することになります。キリスト教徒、ユダヤ教徒、イスラム教徒が同じ場所に集まり、様々な視点で議論します。但し、この時違う見方があることを尊重し、自分達が当然だと思っている考えを脇に置く努力をします。トピックは何でも構いません。歴史上の対立する見解について対話するだけでなく、新しい車に何を選ぶかということでもいいのです。大事なのは「結論」や「妥協点」を見つけることではなく、対話のプロセスを6Csという視点でしつかり評価することです。思い込みや見かけに縛られているレベル1に留まっているか。それともそこから「意識的に」脱し、相手の考えを認めながらも、納得できる根拠に基づいて自分の意見を言うことができたでしょうか。コミュニケーションとクリティカルシンキングに関して、どのレベルにあり、どれだけ進歩したか、見極めることかできるのです。