6Csというアイデア

ここまでずっとキャシーが述べてきた6Csによって、親、教育者、アプリの開発者、博物館の学芸員といった人達が学校内だけでなく、学校外においても学びをダイナミックな考え方で捉え直すことができるだろうというのです。6Csは0歳から99歳まで、もちろん更に年上であってもですが、どんな年齢でも、また地理的境界で分断されることなくどんな地域でも適用できると言います。「6Cs」を活用して、家庭、学校、地域に新たな学びの場を作ってゆこうとキャシーは呼びかけます。

キャシーらが6Csというアイデアを構想し始めたのは、2009年に『幼稚園でプレイフルラーニングを必修にしよう!』(未邦訳)という本を書いた時だったそうです。同じ年、「21世紀スキル育成のための協同事業」が教室を作り変えるために必要な、将来求められるスキルを提示しました。将来に向けての改革は待ったなしの状況だった、彼女らは、著作家、科学者、教育者達を集め、小さな会合を開き、集まった人々それぞれに21世紀に必要なスキルのリストを書いてもらったそうです。膨大な数のスキルか出されたそうですが、全ての人が共通して挙げていたスキルがコラボレーション、クリエイティブイノベーション、クリティカルシンキングだったのです。

こうしたプレインストーミングは色々な考えを生み出しますが単なるバラバラの項目リストになりがちです。キャシーらが考えなければいけなかったのは、これからの時代における「成功」の再定義であり、そのために必要な教育改革についての科学的根拠に基づいた統合的なモデルでした。どうしたら複数のスキルをうまく紡いで、これからの学びの全体像を見せることができるのか。どうしたら学習者個々の違いを尊重し、スキルの成長を測定できる形で示せるのか。熟慮と議論を積み重ねた結果浮かび上がったのが6Csであり、これこそ新たな時代における成績表として活用できるものだと確信したのです。

成長するには継続的な努力が必要です。継続的努力を行うには常に自分の現状を将来の姿と見比べて振り返らなければなりません。そのために役立てるのが成績表であるはずです。6Csによる成績表はまさにこのために使うことができるのだと言います。これからのグローバルな世界において「成功」とは何を意味するのか見極め、そのために必要なスキルを身につけているかどうか振り返るために6Csによる成績表を活用するというのです。

21世紀は、世界中で皆が共通した「成功」のイメージに向かってゆく時代であるとキャシーは言います。そのイメージとは以前述べたように他者と協働し、創造的で、自らの能力を活かし、責任ある市民として生きるということです。「成功」した市民を育てるための環境を、学校の内外を問わず作り出してゆくのが私達の責務だというのです。6Csはこの「成功」のビジョンに到達するための科学的に根拠のある方法を提示しています。

6Csによって実現されるビジョンを現実化する上で、キャシーが紹介してきたレッジョ・エミリアの教育法はとても参考になると言います。私達はこの手法を活用して子どもの全人格を尊重し、何を学ぶかではなくどう学ふかを教育の根幹に置くことができるというのです。6Csはそのために必要となる、密接に繋がったスキルの全体像を表していると言います。