繁栄の決定要因

PISA型の達成日標に向けて多くの国がメキシコ同様の対策をとったそうです。各国は、もはや過去の調査結果と学習到達度を比較するだけで自国の教育制度を検証するのではなく、今や世界最高レベルの教育システムが達成した得点をもとに目標を設定し、その目標への到達度を測っているのです。

社会がどのように人々の知識や技能を使い発展するかは、繁栄の決定要因の一つです。PISAに端を発したOECD国際成人力調査(PIAAC)によると、スキルの低い人はより良い報酬や報われる仕事に従事することが非常に難しいことがわかりました。新しい産業の登場に伴い他の産業が衰退するように、デジタル化はこの傾向を拡散しています。この衝撃をやわらげるのが教育に他ならないとシュライヒャーは言うのです。2016年5月にスウェーデンのステファン・ロヴェーン首相にシュライヒャーが会ったとき、彼はこのことを踏まえ、今後自分の仕事が消えるかもしれないことを人々が受け入れるためには、知識やスキルを持って新しいものを創造するという自信を持つことの重要性を何度も強調したそうです。

スキルの低い成人人口が多い場合、生産性を向させ技術を活用することが困難になり、収入や雇用以上に生活水準を上げる障壁となります。PISAによると、スキルの低い人は変化する雇用市場では脆弱なだけでなく、社会から遮断され政治的なプロセスにおいて無力だと感じることが多いということがわかったのです。

また同じくPIAACによると、スキルが低いほど他者や制度に不信感を持っているようです。一方、教育、アイデンティティ、信頼の関係性の根源は複雑ですが、これらは現代の社会どうしを結びつけるのに重要です。人や公共機関、十分に規制や整備された市場への信頼なくして、特に短期的な犠牲があり長期的なメリットが直ちに明らかにならない場合、革新的な政策のための公的支援の結集は困難となると言います。

教育者は元来、道徳的な見地から教育を主張することを好みますが、教育の質と経済実績との関連性は強いとシュライヒャーは言うのです。この指摘は、重要ですね。しかし、それは単なる仮説ではなく測定可能なものだと言います。経済学者でスタンフォード大学のフーバー研究所のエリック・ハヌシェク上級研究員は、工業世界の教育システムが最高の状態ではないため、OECD加盟国では今年生まれた世代が生涯にわたり経済生産高260兆米ドルを失う可能性があると指摘しているのです。言い換えれば、教育システムの欠陥は大きな景気後退と同等の影響を永久的に持つことになるというのです。

彼は、教育について大切なことを言っています。それは、「過去に学ぶのではなく、子どもたちの将来のために備える」というのです。孔子とソクラテス以来、教育者は二つの目的を認識してきたと言います。それは、過去の意義や重要性を伝えるとともに、若者が未来の課題に備えられるようにすることです。学校で学んだことが生涯にわたり長持ちするとされた時代には、知識や型どおりの認知能力を教えることがまさに教育の中心でした。検索エンジンを介してコンテンツにアクセスし、定型的な認知課題がデジタル化されてアウトソーシングされる今日、生涯学習者となれるように焦点を当てる必要があるというのです。

繁栄の決定要因” への7件のコメント

  1. 「今後自分の仕事が消えるかもしれないことを人々が受け入れるためには、知識やスキルを持って新しいものを創造するという自信を持つことの重要性を何度も強調したそうです」とありました。だからこそ、OECDはエデュケーション2030で新しい価値を想像する力の重要性を提案したのですね。「教育者は元来、道徳的な見地から教育を主張することを好みますが、教育の質と経済実績との関連性は強いとシュライヒャーは言うのです」ともありました。教育と経済、相反するようなものに思えますが、質の高い教育が経済とも関連しているということは見過ごしてはいけないことですね。そのことが理解されれば教育への投資もさらに増え、質を担保できていくわけですね。
    「過去の意義や重要性を伝えるとともに、若者が未来の課題に備えられるようにすることです」とありました。時代をしっかり読み、未来のために今子どもたちは何をすべきなのか、どんな力を育むべきなのかということを理解しておくということが我々には必要な力であるということを感じます。

  2. 社会がどのように人々の知識や技能を使い発展するかは、繁栄の決定要因の一つです。とありました。社会は一つのコミュニティや組織にも言い換えることができそうです。
    そして最後は「生涯学習者となれるように焦点を当てる必要があるというのです。」このように締められています。学び続け、変わり続けられる集団でなければ繁栄や改革はできないのでしょう。
    それが教育機関・施設なのであれば尚更そうした集団でなければなりませんね。

  3. 多くの親は、我が子に心身ともに健康であることの他に何を求めるにしろ、ちゃんと稼いで食っていけるようになって欲しいとか、やりがいを感じられる仕事に就いて欲しいと少なくとも思うのではないでしょうか。「スキルの低い人はより良い報酬や報われる仕事に従事することが非常に難しい」ことがわかったということは、そのスキル重視の保育や教育をもっと大事にすべきであることを感じます。そのスキルが、非認知能力や6Csなどであることは明確です。そして、「過去に学ぶのではなく、子どもたちの将来のために備える」ための教育が必要とありましたが、過去から学ぶことは大切であると認識していましたが、それでは時代の流れを常に追いかけ、時に非効率性をもたらしてしまうようですね。そのため、将来を見据えた動きを起こし「備える」という感覚は、日常の積極的な変革や行動によって習慣化したいなぁとも思いました。

  4. 今回のブログを読みながら、「OECD」を真っ向から否定してかかった学者や就学前教育実践者の顔が浮かんできました。私はOECD・ECE局が発行したStarting Strongに関して第1巻から関心を向けていました。経済協力開発機構がなぜ教育分野について言及するのか疑問を持ちながら。やがて、世界銀行の動き、そしてシカゴ大学経済学教授ジェームズ・ヘックマン氏のノーベル経済学賞受賞研究、8歳までの教育投資とその効果、について知るに及び、経済と教育との関係、当たり前と言えば当たり前のことだと思うのですが、ある集まりの中でその重要性を私が発言して、冒頭の非難を浴びたのです。さて「スキルの低い成人人口が多い場合」、これは日本の若者の今、に該当しないか、と心配になります。「スキルの低い人は変化する雇用市場では脆弱なだけでなく、社会から遮断され政治的なプロセスにおいて無力だと感じる」このへんはどうでしょうか。そして「スキルが低いほど他者や制度に不信感を持っている」これはどうでしょうか。「教育の質と経済実績との関連性は強い」私もシュライヒャー氏と同様に思います。Japan as No.1から下降している日本の経済状態はそのまま教育の質の低下と連動しているという認識を私は持っています。「質の向上」という大本営発表とは裏腹な教育現場の現実が厳然として存在します。

  5. これまで考えられてきたスキルとこれから必要とされるスキルに違いが出てきていると思います。そして、その大きな要因は少子社会への変化であり、社会構造がこれまでと変わってきたことが大きくあり、そのことに目を向け、「一昔前は当たり前にあったことが今はない」それは親子世代ですら大きく違うということをもっと理解しなければいけないように思います。そこに端を発したうえで、「スキルが低い人はよりよい報酬や報われる仕事に従事することが非常に難しい」ということを考えなければいけないのでしょう。「スキル」のとらえ方が違うだけで大きく考え方は変わっていってしまうように思います。「過去に学ぶのではなく、子どもたちの将来のために備える」このことも単に認知的に覚えるだけでは意味が無くなっていく時代になってくるように思います。「過去に学ぶ」というのは個人的には非常に大切なことであると思います。しかし、それは単に学ぶのではなく、本質を学ぶ姿勢を持たないと意味はないのだろうと思います。「生涯学習者」というのはまさにそういった人のことを言うのではないでしょうか。

  6. 〝PIAACによると、スキルが低いほど他者や制度に不信感を持っているようです〟という一文にドキッとさせられました。単純にスキルレベルを上げなければならないことを感じます。不満を口にすることは「無関心」ではないということをアピールすることになるんだと思っていました。無関心が一番の失礼に当たるんだと思っていましたが、そこからもう一段上がることができると考えると、そうなるようにしたいと思えます。
    もう一つ〝過去に学ぶのではなく、子どもたちの将来のために備える〟とありましたが、過去から学ぶことは大切なことであると思っていましたが、過去から本質を知って、将来に「備える」準備をするものでないと意味がないものになるんでしょう。生涯学習者の姿勢はまずは自分たち大人から持つことが必要ですね。

  7. 豊臣秀吉が豊臣秀吉までに出世に至ったのは、ひとえにゼロから築き上げた彼の人柄のような、人格、狂言のようとまで磨き上げられた対人知性であり、それがもしも、現代スキルという点においても、何か資格を得ることよりも、専門について追求していくことよりも、とても重要な位置を占めているとしたら、それは実は誰しもが手に入れられるものなのではないかと思えてきます。有能論という視点の子ども観が正しいとするならば、大人も当然有能であり、それについて学び、磨いていくことは、無料でできることであるとも思えます。それは、実践して、改善していくことの連続で、実はとてもシンプルで、行動することに鍵があることを改めて感じます。

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