良い選択

クリティカルシンキングのレベルが3だと、人々が様々な視点を持っていることに気づき、多面的に見ることはできるのですが、最も良い選択ができません。レベル4に移行することでようやく、どの答えが他の答えより優れているのかを評価できるようになるのです。証拠に基づいて判断し単なる意見に縛られなくなるのだというのです。

では、レベル4はどのような力でしょうか?キャシーは、「根拠づけて上手に疑う」ことであると言います。それは、多方面から役に立つ情報を集めて繋ぎ、上手に疑うことです。

ハーバード大学の著名な生物学者ウィルソンは、「私達は情報の海に溺れながら叡智に飢えている。これからの世界を仕切るのは融合して物事を考えられる人。つまり的確な情報を的確なタイミングでまとめあげ、それを批判的に吟味し重要な決断を賢く遂行できる人だ」と言っています。

米国科学アカデミー刊行の「生活と仕事のための教育』(未邦訳)では、全ての人々に求められる21世紀スキルとしてクリティカルシンキングが、問題解決のスキルと結びつけて必要であるという共通認識が世間一般に形成されていると報告しているそうです。しかし全ての人々がレベル4のクリティカルシンキング能力を身につけているわけではありません。ロポットが社会に溢れ、私達の仕事の質を急速に変えつつある中で、益々レベル4人材の価値は高まる一方だとキャシーは言います。

クリティカルシンキングは元々重要視された能力でしたが、労働環境が大きく変化し、更にその重要性が増しているのです。高速道路の料金所で働く人のようなブルーカラー層にクリティカルシンキングは必要ありませんでした。しかし2009年時点で、アメリカにおいてブルーカラーの労働者が全労働者に占める割合は五分の一に過ぎないそうです。更にこれまで中間層を占めていた事務職の仕事がどんどんなくなっています。大学を例にとればこれまで4人の教職員に対して事務員は1名でしたが、今では24人に対して1名だそうです。

労働需要は両極化していて、熟達した思考を必要とする仕事とあまりスキルは要さないもののコンピュータでは代替が難しい仕事、たとえばガードマンなどに、はっきり二分されています。中間の仕事が見事に消えたのです。これからの子どもを待ち受ける将来はクリティカルシンキングを必要とする層に属するか、殆どスキルの要らない層に属するか二つに一つと言えるとキャシーは言います。

知性とはどういうものであるか長年研究してきたハワード・ガードナーは、これから必要とされる五つの心(マインド)を挙げています。その中の一つが「統合する心」です。ガードナーは「全く異なる情報源から得たばらばらの情報を一つのまとまった情報として繋げる能力がこれからは不可欠」で「大量の情報の中から重要なものを選び」とって、直面している課題に活かさなければならないと言っています。

レシピに入れる材料が増えれば、おいしいスフレができるわけではないのです。どんな材料を選び、組み合わせるかの方が大事だというのです。もちろんシェフは材料を考えるだけでなく、実際に作ってみてよりおいしくできる作り方を研究し続けないと新しいレシピは作れません。