これからの時代

レベル2の思考スタイルは気分の落ち込みやすさにも影響を与えていると言います。これは考え方について考える「メタ認知」と関係しているからです。物事をどうしてもネガティブに捉えてしまう人はどんな些細なことでも悪い方に考えてしまいます。こういう場合は、どんな思い込みに縛られているために物事をネガティブに捉えるのかを明らかにし、考え方のプロセスを見直す必要があると言います。そうすると心配し落ち込む悪循環から抜け出し、自分を取り戻せるというのです。子どもの場合も同じで、もしネガティブに物事を捉えているようだったら、どうしてそう思ったのか考えるように仕向けてみるといいと言います。ネガティブな考えや発想をうまくコントロールすることは、不安や落ち込みを減らすためにとても重要な役割を果たします。

これからの時代はクリティカルシンキングができなければ生き残れないという風潮が強まっているそうです。ビジネスマン向けに批判的に考える力をつけるためのセミナーやワークショップが盛んに開かれているそうです。ハーバード・ビジネススクールのデビッド・ガービンは「自分の考えの前提について問いを深めることと、多面的に問題を捉えることという二つの意味で、思考スキルを研ぎすます必要性に迫られている」と指摘しています。しかしレベル2の「絶対主義者」のまま、これまで当たり前とされた事実に基づいて現実を捉えようとする姿勢で「前提を問う」のは無理だというのです。

キャシーは、BP(ブリティッシュ・ペトロリアム)の例を挙げています。2010年に石油採掘用櫓で爆発事故が起こり、何百万ガロンにも及ぶ原油がメキシコ湾に流出したことがありました。しかし、BPはこのような事故が起こることを全く想定していませんでした。対策は後手後手になり約1250億ドルの損失を出したのです。

ジャーナリストのニール・ガブラーは『ニューヨークタイムズ』の記事の中で、私達の多くがレベル2の段階に留まりクリティカルシンキングをすることなく安易な思い込みを盲信してしまいがちだと警告したのです。最早隠すまでもありませんが、アメリカではポスト啓蒙思想の時代を迎え、合理性、科学、証拠、論理的な議論、ディベートといった発想は失われ、社会には迷信、信念、私見、通説が満ちているとキャシーは言うのです。

そこで、次はレベル3です。この段階では、「どんな意見も正解である」とすることで、個人的な「意見」を「真実」と捉えてしまう危うさを持ています。アドバイスに先立って…新しい薬の効用について…イエール大学に子どもを入れる方法…この手の話がなされる時、必ずと言っていいほど耳にするのが「と言われている」というフレーズです。どんな人が言っているのか定かではないのに何となく納得してしまう危険なフレーズだとキャシーは言います。レベル3のクリティカルシンキングを身につければ、このような曖味なフレーズに騙されなくなるというのです。「多くの人々に言われている」といっても、立場によって色々な考え方があります。複数の考えを吟味せず、ある考えを誰かが言っているという理由だけで受け入れることはできないのです。「と言われている」としか言わないということは「私は誰かが言ったということ以外の証拠を持っていません」と言っているのと同じだというのです。他者からの伝聞は証拠としての価値は低いのです。「意見」だったとしても「と言われている」というだけで満足してしまう人達にとっては十分です。こうして私達はただの「意見」を信用して、トラブルに巻き込まれてゆくのだとキャシーは言うのです。