始まりは問うこと

子どもは、レベル2なりのクリティカルシンキングを始めるのですが、この段階だと相手を見て判断するレベルに留まってしまうのです。専門家で知識を持っている人と判断すれば、その人の言うことは信じるし、そうでなければあまり信用しません。女の子の父親は医者でした。自分の尊敬する父親であるというだけでなく、人の体について詳しいはずの専門家が言っている話だから、彼女の正しいという判断がより強固になったとキャシーは言うのです。

クリティカルシンキングは問うことから始まると言います。とはいえ何でもかんでも問いかければよいというものではありません。相手に問うだけでなく相手の言うことを聴くことも大事だと言います。どうして熱いストープに触ってはいけないの? 何で屋根に登っちゃだめなの?一人で通りを渡ってはいけないのはなんで?といった類の質問を何度もすることに意味はないとキャシーは言います。

しかしこんな次のような問いなら大歓迎だと言います。どうしてスープに小麦粉を入れるの?ブラウニーの素を混ぜる別の方法はないの?例えば、「スプーンの代わりにフォークを使ったらどうなるかな?」のような問いです。偉大な科学者と子どもは世界全体が実験室だと考えているのです。面白そうなものを見つけたらどんなことでも躊躇せずに問いかけます。どうしてあの山はケーキみたいに層が重なってるんだろう?どうしてあんな風になったんだろう?スーパーマーケットで売っている赤い林檎は、緑の林檎の木と同じ木になるのかな?味は同じかな?こうした問いは子どもが自分は何を知っていて、何を知らないか認識するきっかけになると言います。

自分自身の知識の限界に気づくと、同時に他者の知識の限界についても考え始めます。物事を疑ってみることからクリティカルシンキングは動き出すのですが、それはどういう意味かというと、自分の考えていることだけでなく友達や両親の言っていることも疑ってみるということだというのです。

4、5歳までに子どもは他者が心を持つことを理解します。あなたが自分の子どもに身の周りにある物の名前を言った時、それは今目にしているのとは反対側の壁に掛かっていたとします。こうした状況においてあなたが注目した物を見つけ出すことができる子どもは、そもそも見つけ出そうともしない子どもと比べて、新しい言葉を身につけるのが早いのです。「心の理論」を発達させることはクリティカルシンキングの力を高めるために重要であると同時に、他者から学ぶことに役立つのだというのです。

クリティカルシンキングは自分自身がどうしてそう考え、感じたのか問いかけることによって磨かれます。優れた教師は子どもに対してこうした問いかけを行います。ある幼稚園の先生が「今日は何曜日?」と尋ねました。すると一人の子が「月曜日」と答えました。すかさず先生は「どうして分かったの?」とたたみかけると「なぜって」と子どもは口にした後「昨日はお休みで、今日、また最初の日に戻って、だから月曜日」と答えました。自分の考えの根拠について子どもに問いかけることで、おうむ返しに答えるだけでは不十分で、どうして自分はそう考えたのか知ることが大事だと子どもに教えることになるのです。