柔軟に考える

「知識べースの教育——高度な思考スキルを教えることに私たちは反対します。(中略)行動を変容することを主眼とし、固定化した信念を疑うように生徒を仕向け、親の権威を弱めようとしている。」という2012年にテキサス州共和覚がまとめた綱領があります。もちろんこれは共和党全体の考えではありませんが、もし生徒が「固定した信念」を疑う姿勢を持たなかったら大変なことになるとキャシーは言います。子どもは何でもどんなことでも簡単に信じるようになります。それはサンタクロースがいるかどうかというレベルの話ではありません。自分の身の周りの世界について学ぶ時に、稚拙な「信念」に囚われ、本当にどんなことが起きているのか理解しようとしないでしょう。食べ物が消化できるのはお腹の中にいる小人のおかげで、エンジンの中に馬がいるから自動車は動き、魔女の仕業で意地悪な心を持つという「信念」から逃れられないのです。

子ども達が誤った信念に凝り固まることなく柔軟に考え理解を深めてゆけるように、クリティカルシンキングという能力を育てる必要があると言います。もしそうでなければ、権威があると見なされた人の考えは全て受け入れ、自分達の主張を吟味できずに信じ込む人々を育てることになるだろうと言います。

ここでキャシーは、クリティカルシンキングについて、各レベルにおいてどのように獲得していくかを説明しています。

まず、レベル1として、「見かけをそのまま信じる」段階としています。

赤ちゃんや幼児は「見た目」で選びがちだと言います。私達は、生まれながらにしてクリティカルシンキングができるわけではありません。新しい情報を評価するために必要な知識を身につけなければならないのです。では、乳幼児はどのように複雑な世界について学んでゆくのでしょうか。

1歳を過ぎると、どの行動は意味がありどの行動は意味がないか判断できるようになってくるハンガリー科学アカデミーの研究室で次のような実験をしたそうです。14か月の赤ちゃんの前に毛布で体を巻かれた女性が現れます。彼女は赤ちゃんに「こんにちは」と言うとテープルの上に置いてあったライトのスイッチを、体を曲げておでこで押して点灯させます。毛布に巻かれていて両手が使えなかったからです。赤ちゃんはこの様子をじっと見ていました。一週間後、今度は赤ちゃんをテープルに置いたライトの前に座らせました。もし赤ちゃんがおでこでライトをつけたら、一週間前に見たことをただ真似したことになります。しかし手でつけたとしたら、見たままではなく自分で判断して行動したことになります。実験に参加した赤ちゃんはどうしたかと言うと、手を使ってライトのスイッチを押したのです。赤ちゃんは「毛布でぐるぐる巻きだったからあの女の人はおでこを使ったんだよね」と考え、見たままを真似するのではなく自分で状況を判断して行動したのです。赤ちゃんのこうした行動が批判的で合理的な思考の茅生えなのだというのです。

しかし赤ち~んはまだクリティカルシンキングのレベル1なので、いつでも的確で批判的な判断ができるわけはありません。どうしても見たり、言われたりしたことを信じてしまいがちです。ただ信用できる情報を伝えてくれるのは誰かを判断する基盤となる感性は備わっているのです。