実行機能の鍛え方

5歳頃にかけて、独り言が減っていきます。「これなんだろう」など発話として表出していた独り言が、発話として出なくなるのです。つまり、子どもの独り言とは、本来考えるために用いられる言葉を発声している状態です。特に、難しい問題に取り組んでいるときに独り言が出やすいようです。私たち大人も、難しい仕事を与えられた場合、ついつい独り言を言ってしまうことがあります。子どもも、言葉として出すことによって、問題を解こうとしているようです。そして、独り言を多く発する子どもほど、実行機能や難しい問題を解く能力が高いと言われています。「独り言を使った行動をコントロールする」というプログラムでは、この点を重視します。たとえば絵をかいたり文字を書いたりする際に、まず、教師が独り言を言いながら活動するお手本を見せ、独り言を言って活動するよう指示します。その後、子どもたちに実際に活動させる際に、独り言を言うように奨励するのです。このように独り言を奨励することで、実行機能は向上するのです。

④ 劇を行う

最後に、、ごっこ遊びです。子どもたちは、グループで、どのような劇を行うかの計画を立てるように指示されます。たとえば、「あなたがお母さんで、私が赤ちゃんのふりをしよう。私が風邪をひいたので、あなたは私をお医者さんに連れて行って。あなた(別の子)がお医者さんだから、お薬をあげてね」というようなシナリオを立てたとします。このシナリオに子どもたちが賛成した場合、実際にその劇を行います。劇をすることによって、友達内でルールを共有し、友達からの期待を理解する必要が生じます。また、これによって、自分の行動を否応なくコントロールする必要が出てきます。友達と共有したルールに反するような行動はできないのです。たとえば、お母さん役の子どもが、お薬を出してはいけません。

ブリティッシュコロンビア大学のダイアモンド博士らは、ここで紹介した四つの活動を、1年ないし2年間幼児を対象に実施しました。その結果、別のプログラムに参加した子どもよりも、思考の実行機能が向上したそうです。保育活動のなかに取り入れることで、子どもの実行機能が高まるようです。

心の道具プログラムの効果検証が世界中でなされており、ある程度有効であることが示されているそうです。これ以外の活動についてはまだまだ検証が途上ですが、有望とされているのがモンテッソーリ教育だと森口氏は言います。イタリア人の医学博士であるマリア・モンテッソーリが提唱した教育方法で、当初は障害児に対して行われていたのですが、健常児にもその範囲を広げ、20世紀初頭から伝統的な教育方法とは異なる幼児教育の一つとして始まりました。モンテッソーリ教育といえば、独特の教具や異年齢教育が取り上げられることもありますが、最大の主眼は子どもの自主性を重視するという点だと森口氏は言います。教師や親などに外発的に動機付けられるのではなく、子ども自身で、考え、決断することが推奨されます。

モンテッソーリ教育を受けている子どもと、通常の幼児教育を施されている子どもの実行機能を比較した、ヴァージニア大学のリラード博士らの研究があるそうです。この研究では、モンテッソーリ教育を受けていた子どもは、通常の幼児教育を受けている子どもよりも、思考の実行機能に優れることが明らかになっているそうです。実行機能は、子どもが自主的に目標を達成するための力ですから、やはり自主性を育むことが大事なようです。