幼児教育・保育の質

幼児教育や保育の質はさまざまです。では、幼児教育や保育の内容や質が子どもの実行機能にどのような影響を与えるのでしょうか?近年は、幼児教育・保育の質をさまざまな形で測定する試みがなされています。ここでは、森口氏は、その中で実行機能との関係が示されている幼児教育・保育の質について紹介しています。

イリノイ大学シカゴ校のゴードン博士らの研究グループは、三つのカテゴリーからなる幼児教育・保育の質評価を行っているそうです。一つは、園のハードウェアにあたる部分です。園の広さや備品などが含まれています。二つ目と三つ目はソフトウェアにあたる部分で、二つ目は教諭・保育士による子どもの健康や衛生に関するかかわり方です。たとえば、トイレットトレーニングや睡眠などをうまく導けているかが評価されます。三つ目は、子どもとのやりとりにあたる部分で、うまくコミュニケーションを取れているかなどを含んでいます。

訓練された観察者が、幼児教育・保育の様子を見て前記の三つの質を評価し、子どもの実行機能などの発達とのかかわりを検討したそうです。その結果、二つ目と三つ目の幼児教育・保育の質が、子どもの実行機能とかかわることが示されたそうです。つまり、子どもの健康や衛生に関するかかわり方が上手く、子どもとのやりとりが円滑な幼児教育施設では、子どもの実行機能が育まれやすいのです。

健康や衛生に関するかかわり、たとえばトイレットトレーニングなどは、大人側にとっても子どもにとっても忍耐の連続です。便座に座りたくないという気持ちを抑えて座ることなどにより、子どもの実行機能は育まれるのだと考えられると森口氏は言います。また、子どもとのやりとりについても、支援的な養育行動の効果と同じだと森口氏は考えています。このように、教諭・保育士のかかわりは、子育てで重要だった部分と通じるところが多いと彼は言うのです。ただ、もちろん、幼稚園や保育園ならではのものもあります。それが、集団の子どもにかかわるという部分だと彼は言います。家庭では、親と子どもは一対一ですが、幼稚園や保育園では一対複数です。このような集団の子どもに対して、どのようなプログラムなら実行機能を鍛えることができるのでしょうか。

集団活動のなかで、現在世界で最も注目されているのが、「心の道具」というプログラムです。そのため、森口氏は、それについて少し詳しく紹介しています。このプログラムでは、子どもたちに道具を使わせることで実行機能や読み書き能力を高めようとするものです。ここでの道具は、物理的な道具も含みますし、心理的な道具も含みます。

心理的な道具とは、言葉や遊びなどのことを指します。たとえば言葉は私たちの考えや行動を支えています。言葉を使わなくても私たちは考えることができますが、言葉を使うことで論理的推論などの複雑な思考が可能となります。このように、言葉を「道具」として使うことで、私たちの実行機能は支援ができると言われています。