訓練のしかた

森口氏は、実行機能を鍛えるための方法を提案しています。

これまで、自分をコントロールする力である実行機能の育て方について見てきましたが、それは、遺伝的な要因も重要であるものの、子どもにおいては、子育てなどの環境的な要因が与える影響が非常に大きいことが示されていました。そうすると、実行機能を鍛えたり支援したりすることができそうだと森口氏は言います。国外では実行機能の低い子どもたちを支援する動きが広がっているそうです。では、どのような方法で実行機能を支援できるのでしょうか。

子どもの実行機能を訓練する研究はまだまだ途上だと言います。世界中の研究者が実行機能を向上させようとさまざまな方法を試みているそうです。森口氏は、現時点での最新の成果を紹介していますが、5年後や10年後には異なった結果が出ている可能性はあると言います。そこで、改めて、なぜ、研究者たちは実行機能の訓練にそれほど注目しているのでしょうか。

一つの理由は、子どものときの実行機能の高低などが、その子どもの後の学力や友人関係、大人になったときの経済状態や健康状態を左石するためだと言います。もう一つの大きな理由は、実行機能はIQなどよりは、支援や環境の影響を受けやすいと考えられるためだと言います。

実行能を鍛えるためにどのような訓練が有効であるのかは、科学的に調べることが可能だそうです。世の中には、子どもの能力開発を謳うかなりうさんくさい教育方法や塾まがいのものがあるので、この点を理解することは極めて重要だと森口氏は言います。たとえば、子どもが家で、ある英語を2カ月間聞き続けて、その後で英語のテストの成績が向上したとします。この場合、この英語のおかげでテストの成績が向上したのでしょうか。そうではないかもしれないと森口氏は言います。たとえば、子どもが学校で日常的に英語の授業を受けていたら、英語の授業のおかげでテストの成績が向上したのかもしれません。

こういう場合、いくつかのグループを用意し、そのグループにランダムに子どもを参加させることで、英語CDの効果だったかを調べることができます。たとえば、英語CDを聞くグループと、それと比較するグループを置きます。前者を実験群、後者を比較群とか対照群と呼びます。この比較群は、できるだけ実験群と同じような活動をすることが望ましいとされています。たとえば、英語を聞くグループとの比較であれば、何もしないよりは、英語以外のCDを聞くグループのほうが良いということになります。

ランダムというところが大事だと言います。研究者側が、成績が上がりそうな子どもを実験群、そうではない子どもを比較群に当てはめても意味がないためです。ランダム化比較試験と呼ばれます。比較群と比べて実験群のほうがより英語のテストの成績が向上していれば、英語の効第があったと結論づけることができます。逆に、両群で同じようにテストの成績が向上していれば、英語CD以外の効果だということになります。

このような方法を用いて有効だと言える方法こそ、科学的に信頼できる方法だと森口氏は言います。そこで、彼は、主にそのような方法を用いて実行機能を訓練した研究について紹介しています。最初は、個別の子どもを対象にした方法を紹介し、次に集団としての子どもを対象にした方法について紹介します。