実行機能を育てる

最後に、子育てについて、これらの研究からどういうことが言えるのかを森口氏はまとめています。

これらの研究から、実行機能に悪影響を与えるものは非常にはっきりとした結果が出ていると言います。つまり、「これをしたら子どもの実行機能に良くない」ということは明確に言えると言います。それは、ネグレクトなどの虐待であり、体罰であり、親の精神不安定であり、テレビやスマートフォンの長時間視聴であり、睡眠不足です。特に一番の悪影響は、虐待や体罰などによって、子どもとの関係性が築けず、子どもに安心した環境を与えないことです。虐待がひどければひどいほど、体罰をすればするほど、子どもの実行機能の発達は悪影響を受けてしまいます。

一方で、実行機能の発達に良い影響を与えるものについては、それほど明確なことは言えないと言います。現在のところ言えるのは、支援的な子育てが良い、一部の管理的な子育ても大事であるというくらいだと言います。なぜ彼が、このようなことを言うのかというと、現在、世の中には「天才を育てる育児法」「脳科学に基づく子育て」などの子育て本や情報が溢れています。育児の専門家を称する人、脳科学者、天才を育てたと自任する親などがそのような本を書いたり、SNSやブログなどで発信したりします。ところが、それらに目を通してみると、ほとんどが科学的な根拠がないか、あっても浅薄なものばかりだと森口氏は言うのです。なぜこんなに自信満々に根拠がないことを言えるのだろうと彼は、不思議に思えるくらいだというのです。そして、そのような方々は「子どものために〇〇するべきだ」と強い言葉で言います。

森口氏は、親が、これらの言葉に振り回されることを懸念しています。ただでさえ子育ては忙しいのに、親は子どものためになるのであればと、「〇〇するべきだ」を実践しようとします。これが親を疲弊させ、健康を蝕みます。親の精神衛生は子どもの発達に大きな影響力を持つので、結果として、子どもにも不利益になってしまうというのです。

科学的な視点から言えることは、

①         虐待や体罰など、子どもに悪影響になるようなことは絶対に避ける

②         子どものことをしつかりと見つめ、子どもとの関係性を大事にし、安全で安心した生活ができるよう環境を整備する

③         子どもの力を信じ、親が先回りせず、後ろから支える

④         しっかりとした生活習慣を築かせる

だと言うのです。

最後に、森口氏は実行機能の育て方についてまとめると以下のように整理しています。

・実行機能の発達には、遺伝的要因と環境的要因の両方が関係するが、子どものときは環境的要因がより重要

・胎内環境は重要で、早産は実行機能の発達のリスク要因

・支援的な子育ては良い影響が、極端な管理は悪い影響がある

・親の振る舞い、夫婦仲などの家庭の雰囲気も重要

・睡眠やメディア視聴の方法、生活習慣も影響がある