睡眠時間の長さ

テルアビブ大学のサダー博士らは、小学校高学年の子どもを、ランダムに早寝群と夜更かし群に分けて、その前後に思考の実行機能のテストをしたそうです。その結果、早寝群は成績が向上するのに対して、夜更かし群は成績が低下することが報告されています。

小学生の研究に比べると数は少ないのですが、乳幼児期の睡眠もやはり実行機能に重要な影響を与えることが示されているそうです。カールソン博士らは、1歳時点における乳児の睡眠の質を測定し、その後の実行機能への影響を検討したそうです。この研究では、1歳時点における夜の睡眠時間が長ければ長いほど、その子どもが2歳になったときの思考の実行機能の成績が高いことを示しているそうです。

面白いのは、昼寝を含めた子どもの一日の睡眠時間の長さは実行機能と関係しないという点だそうです。森口氏は、この結果から、夜に子どもが寝ることが重要だということではないかと考えています。ちなみに、しかし、森口氏自身は、このような偉そうなことを言っていても、仕事から帰って子どもと風呂に人ったり、食事やその片づけをしたりしていると、あっという間に9時を回ってしまって、早い時間に子どもを寝かせるのはなかなか難しいものだと振り返っています。

また、家庭のルールという意味では、睡眠同様に家庭による違いが大きいのがテレビなどのメディアの視聴時間ではないかと言います。テレビやインターネットの動画を見せると、子どもが静かにしてくれることから、ときにはメディアに頼らざるを得ないことはあります。テレビなどのメディア視聴が子どもの発達にどのような影響を及ぼすのかというのは、一般的に関心が高い問題です。わが国では、2004年に日本小児科学会が、2歳以下の子どものテレビやビデオの長時間視聴は避けるべきだと提言を出しています。長時間のテレビ視聴で言葉の発達が遅れるという研究知見を受けてのことです。

実際には、テレビ視聴が子どもの発達に良い影響を及ぼすか、悪い影響を及ぼすかは、結果が混在しているそうです。子どもに教育番組を視聴させることでむしろ言葉の発達が促進されるという結果もあるそうです。一概に悪いとは言い切れないようです。問題は、何を、どの程度見せるかという点になるのではないかと森口氏は言います。

実行機能については、テレビ視聴はどのような影響があるでしょうか。実行機能の発達に影響を及ぼすのは、大きく二つあると彼は言います。一つは、誰も見ていないにもかかわらす、ダラダラとテレビがついている状態です。ジョージタウン大学のバー博士らは、家庭における乳児期のテレビ視聴と思考の実行機能の関係を調べたそうです。その結果、1歳の時点において、大人向けの番組が長時間ついていればいるほど、4歳時点における思考の実行機能の成績が低いことが示されているそうです。

なぜダラダラとテレビがついているのが悪いかというと、子どもが絵をかいたり、遊んだりする場合に、少し気になるシーンや音楽が流れると、子どもは今やっている活動を止めて、テレビに注意を奪われてしまうからです。この場合、子どもの意志ではなく、テレビの映像や音声によって活動を切り替えられています。思考の実行機能は、子どもが自分で主体的に頭を切り替える能力なので、実行機能は育まれないのです。