管理的の良し悪し

森口氏らの研究では、体罰などを除いた管理的な子育てが子どもの思考の実行機能に影響を与えるかどうかを検討したそうです。たとえば、親が、子どもを自分の言いつけ通りに従わせているかや、歯磨きなどを子どもがやるまで何度でも言い聞かせるか、などを尋ねたそうです。その結果、親が管理的であると、子どもの思考の実行機能が育まれることが示されたそうなのです。やはり、親の統制は重要だと森口氏は言います。それでは、具体的に、どのような管理的な子育てが子どもの実行機能に影響を与えるのでしょうか。森口氏は、家庭のルールという点に注目して考察しています。

どの家庭にも、その家庭ならではのルールがあるでしょう。たとえば、家に帰ってきたら手を洗う、晩御飯のときにはテレビをつけない、などのルールです。どのようなルールであれ、家族の全員が、そのルールをしっかりと守るということが肝心です。たとえば、母親は家に帰ってきたら自分も手を洗うし、子どもにも手を洗うように言うけれど、父親は手を洗わないし、子どもにも手を洗うように言わないなどのケースは好ましくないと森口氏は言います。さらに彼は、他にも、子どもと大人で違うルールがあるということも望ましくないと言います。子どもには9時以降おやつを食べてはいけないと言うのに、親は9時以降に晩酌をする状況は子どもにとって不可解であるとも言うのです。家族が皆ルールをしっかり守る様子を見ることで、子どもにもルールを守る意識が形成されるというのです。それによって、ルールに応じた行動を選択し、不適切な行動をとらないようになるというのです。

また、ルールがしっかりとあるということで、子どもにとって次に何が起きるかという見通しを立てることができると言います。家庭における安心感にもつながってきます。一方で、ルールがない家庭では、子どもは次に何が起こるかわからず、不安なまま生活することになります。こうした不安がストレスにつながってしまうというのです。

家庭のルールに関連して、二つの生活習慣の影響について森口氏は紹介しています。それは、睡眠とメディア視聴の影響です。睡眠のルールは、家庭によってまちまちです。夜遅くまでテレビを見続けて、なかなか子どもが寝ない家庭もあれば、9時になったら寝る、などのように明確なルールを設けている家庭もあります。眠ることは、私たちの脳にとって大事なことです。睡眠中には私たちの脳では、起きている間に損傷があった箇所などを修復したり、起きている間に覚えたことを記憶に定着させたりすることが報告されています。

また、眠る前に難しい問題に取り組むと、起きた後にその問題に対する解決策を思いつくなど、記憶や学習に非常に重要であることも示されています。実行機能に関して言うと、実行機能の脳内機構である前頭前野は、睡眠中に活動が著しく低下することが知られています。睡眠不足によって前頭前野を休ませることができないと、起きている際の活動に影響が出るそうです。睡眠不足は、学業不振につながりますし、それ以外にも精神疾患、情緒不安定、肥満などにも結びつく可能性があると言われています。このことは特に子どもにおいて顕著です。

幼児期には、2~3割の子どもが睡眠に関する何らかの問題を抱えているという統計もあるそうです。なかなか寝付けなかったり、寝ている間に歩いたりしてしまうのです。