子育ての質

支援的な子育てというのは、親が子どもの行動を一から十まで教えるのではなく、子どもが自分でがんばろうとしているときに、少しだけ後ろから支えてあげる、そういうイメージです。ただし、子どもがどれだけ時間をかけてもできなそうな状況では、この程度のヒントでは難しいでしょう。大事なことは、親が子どもの現在の能力をしっかりと見極めたうえで、今取り組んでいる課題を子どもが自分で解決するために、最低限の支援をするということなのです。対極にあるのが過干渉です。

子どもの実行機能が、このような親のかかわりによって成長することが示されています。ミネノタ大学のカールソン博士らの研究では、親の支援的子育てを、親子のパズル遊びのなかで検討したそうです。子どもがうまくパズルができない状況で、親が子どもにどのようにかかわるのか。ある親は、子どもがパズルをできないのがもどかしくて、自分が実演してみせます。これは親が子どもに過干渉している例であり、実行機能の発達は促されないと言われています。

別の親は、子どもが自分でパズルを解決できるように、ヒントだけ与えます。こちらのほうが支援的な親だということになります。このような親は子どもが問題解決することを支援しているもののけっして親みずからが解決しているわけではありません。子どもが自ら考えて行動をすることが支援されるのです。そのため、自分をコントロールする力が育まれやすいのです。支援的なかかわりをするには、親のほうにも実行機能が必要となることがわかります。子どもが自分で片付けようとしてるのに、面倒だからとか、時間がかかるからとう理由で、親が片付けてしまうということは日常的によくあることだと思います。ただ、子どもの自律的な行動を支援するためには、親も実行機能を発揮して、子どもが自分でやるのを見守ることが必要なのです。森口氏は、これは簡単なことではありませんがと言っています。

ここで森口氏は、一つ注意をしています。支援的な子育てとは、やみくもに子どもを褒めることとは違うということだと言います。もちろん、子育てにおいて子どもを褒めることは必要ですが、子どもの行動を何でもかんでも褒めればいいわけではないと森口氏は言うのです。子どもの発達において、褒めたりご褒美を与えたりしすぎることによる負の影響が知られているからです。トマセロ博士らの研究では、1歳半くらいの乳児の親切な行いがご褒美を与えられることによって減少することが示されているそうです。1歳から2歳くらいの子どもは非常に親切で、見知らぬ人であっても進んで手伝ったり助けたりします。たとえば、知らない人が物を落としたりすると、自ら拾いに行きます。子どもは、最初はそのこと自体を楽しんでこのような行為を行います。褒められたりご褒美をもらったりするために行うわけではありません。ところが、手伝うなどの行為をした後にご褒美をもらえると、子どもは自ら進んで手伝わなくなります。つまり、最初は自発的に行っていた行動が、ご褒美をもらうことによって、ご褒美をもらうことが目的化してしまい、自発的に行わなくなったのです。